. Rolling Stone Japan(ローリングストーン ジャパン)
Rolling Stone Japan(ローリングストーン ジャパン)
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ジェームス・ブランドン・ルイスが語る、西洋音楽の枠組みを超越した「即興と記憶のシステム」

ジェームス:父が牧師だったこともあり、霊性や創造主への信仰は、私の人生と常に共にありました。今も信仰は私の内にあり、宇宙や世界の中で自分の小ささを意識することで、物事に意味が生まれると感じています。『For Mahalia, With Love』はそうした意識から生まれた作品で、祖母の影響が大きかった。祖母は幼少期にマヘリア・ジャクソンのコンサートを観ていて、その体験を語る姿は、初めてコルトレーンを聴いた人たちが語る神秘体験のようでした。

私のすべてのアルバムには、「存在の感覚」が通底しています。存在すること、アーティストであることの意味を問う姿勢は、日々の実感と深く結びついています。たとえばジョン・コルトレーンの『A Love Supreme(至上の愛)』が象徴するように、創造性は神との出会いから生まれるものだと思うんです。信仰や愛を「体験」せずに演奏することはできません。

―学生時代、トランペット奏者ワダダ・レオ・スミスに師事していたそうですね。彼からはどんなことを学びましたか?

ジェームス:「既知のものを超えろ(Get beyond known things)」という言葉が特に印象に残っています。すでに知っている領域の先へ行け、という教えですね。彼だけでなく、チャーリー・ヘイデンやウィリアム・パーカー、デイヴ・ダグラス、ヘンリー・スレッギルといった人々からも多くを学びました。彼らに共通するのは、「限界のその先を見据える」という姿勢です。

それは「意図」や「意味」「美しさ」といった美学に関わる話でもあります。音をただの周波数や道具としてではなく、何かを“具現化”するものとして扱う。音楽家とは、音に意味を与える存在なんです。単に音を並べるのではなく、「何を伝えたいのか?」という感覚や目的意識が問われている。ウィリアム・パーカーは「トーンの世界へと逃れる(escaping to the tone world)」という概念を語ってくれましたが、それはサン・ラにも通じるものがあり、異なる次元や在り方を目指すという思想は、世代を超えて受け継がれていると思います。

―ワダダ・レオ・スミスは独自の音楽システム「Ankhrasmation」や図形楽譜を用いています。そうした部分は、あなたの音楽にも影響を与えていますか?

今も五線譜で譜面を書いてはいます。その一方で、視覚的な発想からも音楽を考えます。実際に、自分で分子構造を描き、それを音楽理論や原子価構造の概念と組み合わせて、和声の展開を予測するモデルとして活用しているんです。こうしたシステムは、カルテットの新作『Abstraction is Deliverance』(5月30日リリース)にも反映されています。

―その「システム」というのは流動的に変化したりもするんですか?

ジェームス:アンサンブルごとに色合いや目的は異なります。すべてのグループが同じ「システム」で動いているわけではありません。たとえば(今年リリースのアルバム)『Apple Cores』は若い世代とつながるためのプロジェクトで、ヒップホップやジャズのエネルギーを通じて交流を図っています。一方で『For Mahalia, With Love』や『Jesup Wagon』といった過去のプロジェクトでは、よりトラディショナルな編成を使いながらも、自分なりのシステムを組み込んでいます。絵を描くときに毎回同じ色を使わないのと同じで、表現に応じて使う道具や構造は変わります。「システム」とは結局、情報をどう整理し構築するか、ということなんです。

私が音楽を学び始めた頃は、西洋の楽譜や伝統に基づいた教育ばかりで、「個人的なアプローチ」について考える機会はありませんでした。でも、オーネット・コールマンやワダダ・レオ・スミス、セシル・テイラーらに出会い、音楽には別の道があると気づいたんです。サン・ラの「Space is the Place」(空間こそが居場所)やアルバート・アイラーの「Music is the Healing Force」(音楽は癒しの力)といった哲学的な思想を通じて、オーネット・コールマンのハーモロディクス理論のみにとどまらず、「音楽とは何か」というより深い問いへと向かうようになりました。

Translated by Sachiko Yasue

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