朝ドラ『ばけばけ』放送直前! 小泉八雲の波乱の人生と、妻・セツにかけた心温まる言葉を予習
「妾が、女子大學でも卒業した學問のある女だつたら、もつともつとお役に立つでせうに……」と母が申すと、父はいつも母の手を執つて戸棚の傍へ連れて行き、其處の襖を開けました。戸棚の中にはガラス製の本棚が一つあつて是には父の著書が金文字の背をヅラリと並べてゐるのでした。是を指して「斯、誰のお陰で生まれましたの本ですか? 學のある女ならば幽霊の話、お化けの話、前世の話、皆馬鹿らしのものと云ふて嘲笑ふでせう」と申して母が面映がる程に父は其の場で母の労を賞揚するのでした。傍に居る私に向つて迄も「此の本皆あなたの良きママさんのおかげで生まれましたの本です。なんぼうよきママさん。世界で一番良きママさんです」などと申して眞剣に褒めそやすのでした。 〜小泉一雄『父「八雲」を憶ふ』(警醒社)より〜
[参考] 小泉八雲『小泉八雲全集』第12巻(恒文社・小泉節子「思い出の記」所収) 小泉一雄『父「八雲」を憶ふ』(警醒社) 工藤美代子『小泉八雲 漂泊の作家ラフカディオ・ハーンの生涯』(毎日文庫) 東雅夫『日本幻想文学事典』(ちくま文庫) ラフカディオ・ハーン/田代三千稔 訳『怪談・奇談』(角川文庫) 歴史の謎を探る会[編]『小泉八雲と「怪談」の世界がわかる本』(KAWADE夢文庫)