草彅剛が大切にする“アナログ”な感覚 人と話し、モノを集め、体験から学ぶ――表現の土台を作る哲学とは
以前、このラジオでも、自身のコレクションに値札を付けたり、「Mr.KATORI HOLD」「Mr.INAGAKI HOLD」と取り置き札を添えたりと、古着ショップのオーナーになった“妄想“を楽しんでいることを明かしていた草彅。自宅だけでは飽き足らず、舞台の楽屋にまで持ち込んでいたというエピソードも記憶に新しい。多忙な日々の息抜きに古着を愛で、そして時間にゆとりが生まれてもなお服に手が伸びる。その変わらぬ情熱は、さすがと言うほかない。
【激レア】肘破けヴィンテージに秘められた物語〜草彅剛のボロの美学〜整理しながら、「あ、こんなの持ってんじゃん!」「いやあ持ってるな〜、俺!」とうっとりしてるのだと続ける草彅。「だけど、同じようなのがほしくなって、『やっぱ、あれは買わなくて良かったな!』とかさ(笑)」と熱を帯びていく草彅の言葉を、香取が「どういうこと? 同じようなのを持ってるから、『いやいや持ってんじゃん』って?」と通訳する、“しんつよ”ならではのやりとりも。 さらに、最近の好きなテイストについて問われると「新しいデッド(ストック)が好きで。またボロが好き」「ボロよりか新しめのミントコンディションが好きで……って、ずっとそれをまわってる感じ」と続ける。唐突に出てきた専門用語に、香取が「ミントコンディションって何ですか?」と、ふたたび視聴者との距離を埋めるように質問する一幕も。すると、「ミントっていうのはさ、よくわからないけど古着用語でさ」と本人もよくわからずに使っていることが明らかに。「これくらいの」と、おそらく着用している服を指さしている草彅に、香取が「きれいめってこと?」と補足していく。「何なんだよ、あれ(笑)! “ミント”とかさ。“スペシャルピース”とかさ。“アートピース”とかさ。“クレイジーピース”とかさ」と古着ショップで飛び交う専門用語に、これほど古着好きな草彅も困惑しているそう。「札に書いてあるの。『49万8000円、クレイジーピース』って。ペンキが飛んでて『これはクレイジーだぜ! ワオ!』とか思って、欲しくなるのよ。でも、よく考えてみると、違うお店では同じような個体を“アートピース”って書いてあるの。もう、何なの(笑)!?」とわからないなりに面白がっている。 最近の流れで言えば、その違いについてすぐAIに聞くという人も少なくないはず。だが、草彅は答えを「古着屋さんに聞きたい」という。そこには聞いた相手なりの“違い”の基準を探る作業になる。そして、ほかの人がなぜそう書いたのかを想像する余地も生まれる。目の前の人との意見交換を通じて、自分自身にとっての言葉の概念も確立していく。 2月8日放送回では、AIについて「自分では考えなくなって楽になるわけじゃん。もしかしたら、人間としての脳の機能が衰えていくかもしれないよね。考えるっていう思考が……脳が変化していくのかな。わかんねえけど!」と話す一幕もあった。 「俺はアナログが好きで、自分で考えたいってのがあるのよ。『オムライスの作り方教えて』って(AIに)言ったら、全部教えてくれるわけでしょ。それはそれで便利でいい。でも、なんか『自分でやりたい』があるんだよ。『俺にやらせてよ』みたいな(笑)」と、あくまで自分の体験を大事にしていきたいと話していた。 これまでなら自分で試行錯誤しながら取り組んでいたことを、すぐに解決してくれる便利なツールが今続々と登場している。しかし、だからといってその不便さや煩わしさがすべて悪いことでもない。雑然とした服たちが整っていく気持ちよさも、違いがわからない言葉たちに翻弄される面白さも、何十年、何百年前に作られた服が自分の手元にやってきためぐり合わせも、効率的に生きていたら味わえないものだ。 たくさんのモノに囲まれ、なんでも「まずは自力で」とアナログな感覚を大切にしたい草彅は、時代に逆行しているように映る部分もあるかもしれない。だが、むしろ彼がそれを楽しんで見つめているからこそ、私たちがつい見失いそうになる大事な何かを思い出させてくれる。考えてみれば、人が何かを“演じる”というのも、実に原始的なエンタメだ。 ゆったりとした時間のなかで、練り上げられていく草彅剛の思考。それを私たちは、彼の表現を通じて再確認しているのかもしれない。この落ち着いた日々が次なる作品の土台を作っている、といっても過言ではない。次は、どんな熟成された思いが宿る作品を届けてくれるのか。新たな作品の知らせを待ち望む気持ちは、日を追うごとに加速するばかりだ。