夢の世界王者に向け勝ち続ける―― 2.10 WBO-AP王者の川浦龍生がIBF7位の韓亮昊とV3戦
■ブレずに自分のボクシングを貫く 「相手や展開、いろいろな状況にブレることなく、自分のボクシングを貫くこと」。移籍以来、川浦をみてきた丸山有二トレーナーは今回のテーマを語る。昨年11月には三迫貴志会長、同門の池崎創哉とともに約1週間、フィリピンでスパーリング合宿。自身初の海外合宿で、ボクシングにとどまらない大きな経験をしてきた。年末12月には寺地拳四朗(BMB)の仮想パートナーを務め、「いい気づきもあった」という。
■チャンピオンになって、自信もついてきた ――今回が3度目の防衛戦です。相手の韓選手にはどんなイメージを持っていますか。 川浦 アマチュアで長くやってて、形がキレイですね。巧い選手というイメージです。
――長身のサウスポーです。 川浦 173センチですよね。背が高くて、距離が遠いのかな、というのはありますけど。
――やりづらそうなイメージも? 川浦 前に攻めたりもするし、どう出てくるかもあるんですけど。自分としては離れてやるなら追いかけるだけだし、来てくれても全然いいですし。
――中間距離での駆け引き、攻防には自信がある。 川浦 そうですね。だから、どの距離が嫌というのはないですし、どういう展開になっても勝つだけなんで。
――タイプは異なりますが、日本ランカー時代(2021年4月)に対戦した田ノ岡条(小熊)選手が同程度の身長(172センチ)で、リーチのあるサウスポーでした。 川浦 あの試合は、遠いなというか、途中までやりづらいなと感じてたんですよ。やりづらさを感じるとしたら、ああいう感じをイメージしておけばいいのかな、と思ってますね。
――やりづらかったとはいえ、3ラウンドに左一撃で倒して、フィニッシュしました。短い時間で対応できたということですか。 川浦 はい。3で倒せたし、タイプは違いますけど、落ち着いてできれば、というのはあります。
――丸山トレーナーは、とにかく相手や展開、いろいろな状況に左右されないで、ブレずに自分のボクシングを貫くことが今回のテーマということでした。 川浦 相手がこうだから、展開がこうなってきたから、やりづらい、嫌だなとか、そういうので崩れたりしないように。そこは自分次第なんで。自分中心でやりきるということですね。
――タイトルを獲った大橋(哲朗=真正)戦は、嫌な流れになったところで崩れずに踏ん張って、逆転しました。 川浦 そうですね。あの試合は自信になりましたし、チャンピオンになってから、少しずつ自信もついてきてるんで。
■直前のラウンド変更など、難しさのあったV2戦 ――ただ、前回8月(12日)の白石(聖=志成)選手との2度目の防衛戦では、試合後の会見を含め、いろいろな人から言われたと思いますけど。 川浦 はい。最後ですよね(苦笑)。
――最終ラウンド、試合を締めるところで崩れました。あらためて、どう受け止めていますか。 川浦 あれは(折り返しの)6(ラウンド)から相手が出てきて、(ペースを)つかまれかけて。
――序盤から川浦選手のペースで、白石選手が変えようと出てきましたね。 川浦 はい。で、実際に6はポイントも取られてて、次も絶対に続けてくると思ったんで、そうさせないように、こっちもペースを上げたんですよ。それで(ペースを)引き戻せたんですけど、そのまま上げ過ぎたというか。で、7、8、9と取れてるな、もう行けるな、と思ったんで、最後の10ラウンドは倒しに行くとかじゃなくて、勝ちに行こうと思ってたら、体がついてこなくて。
――飛ばし過ぎで? 川浦 そうですね。丸山さんからも、ずっと(ペースを)コントロールしろ、とは言われてたんですけど。あと直前で10(回戦)になったのもありましたね。
――試合4日前ですか。あの試合から(リング禍の安全対策で)12ラウンドから10ラウンドに変更になったんでしたね。 川浦 短く感じましたね。12で、長いからこその余裕もあるというか、ラウンド数が少ない分、(ポイントを)どんどん取っていかないとダメだな、みたいなことも考えてたし、10まで来て、あとひとつで、もう行けるとなって、集中力がなくなったところもあったかもしれないです。
――いろいろ考えてしまった。 川浦 正直、試合に対する恐さとか、普段は考えないようなことも考えちゃいましたし、最後の10も相手に出てこられて、効いてはないんですけど、ここで下がっちゃうと(早いタイミングでレフェリーに)止められるかもしれない、と思って、打たれながらでも前に出ようとして、相手にへばりつくような、変な感じになっちゃったんですけど。
――精神的に難しいところもあったんですね。 川浦 まあ、それは相手も同じで、言い訳になるんで。でも、いい経験になったし、無理をしても行くところは行かないとダメなんで、自分でコントロールしながら。で、最後まで、気を抜いたわけじゃないんですけど、どんな状況でも気持ちを切らさないようにしないといけないですね。
■先輩・中川健太と切磋琢磨しながら ――3団体の世界ランクも上位に上がってきました。 川浦 ランキング上はだんだん世界に近づいてきてるな、と思うので。いつもの試合と変わらずですけど、とにかく勝つことだけです。せっかくいただいたチャンスで獲ったベルトで、獲るときはほんとに辛かったんで。そのベルトを渡したくはないですし、しがみついてでも勝ちきることが第1目標ですね。どんな展開になっても。
――辛かったというのは、先輩の中川(健太)選手が返上した日本王座の決定戦に出るチャンスを移籍初戦でもらいながら、負けてしまったこともあって。 川浦 はい。しかも(相手のケガで)2度の延期があって、相手がころころ変わっての、(最初の試合予定から半年で)やっとできるとなったところで負けたんで。
――その1年後に中川選手からベルトを奪った大橋選手から奪い返したんでしたね。 川浦 はい。いろんな思いをして、しかも逆転のしんどい試合で獲ったベルトなので。
――韓選手は6戦目、デビューから2年足らずで、川浦選手が苦労して獲った分、そう簡単には獲らせないぞ、というのもありますか。 川浦 そうですね、はい。プロで重ねてきたキャリアは16戦ですけど、そろそろ(今年11月でデビューから)10年になりますし、いろんな経験をしてきたんで。向こうもアマでいろんな経験をしてきたと思いますけど、そこの違いを見せたいですね。
――中川選手も4団体で世界ランクに戻ってきて。ある意味、同じ階級のライバルでもありますが、今回もスパーリングパートナーのひとりとして、力を貸してくれているんですね。 川浦 はい。中川さん、やっぱり、経験があって、引き出しも多いんで。いろいろ切り替えて、僕の嫌なこと、嫌なことをやってくるし、パンチもあるから気を抜けないんで。ありがたいです、やっていただけて。同じ階級ですけど、世界を目指して一緒にやってる先輩、同じチームなんで、中川さんも頑張ってるから、オレも頑張らないと、みたいな感じで、切磋琢磨しながらできてるんで。いいですね。(中川が)40歳というのが分からないくらいです(笑い)。
■どんな展開になっても大丈夫 ――今回も(寺地)拳四朗(=BMB)選手と何回かスパーリングをしたそうですね。 川浦 2回くらいですね。何人か交代で、例えば8ラウンドやる間の2ラウンドだけ入るとか、そんな感じですけど。
――拳四朗選手の年末の相手が左にスイッチすることがあるから、その対策として。 川浦 はい。対策で。で、とにかく前に出て、攻め続けてくれと言われたんで、そういう感じでやったんですけど。よかったです。いい気づきもあったんで。
――いつもの自分と違うスタイルで、その2ラウンド、拳四朗選手相手に攻めることに徹して。 川浦 そうですね。(拳四朗に)それだけ行ったら打たれちゃうんで、普通はやらないですけど、前に前に攻め続ける分、相手が下がらざるを得ないところも出てきて、そうなると(展開的には)自分がラクになるんですよ。
――自分もスタミナを使うけど、相手も嫌だし、疲れるし。 川浦 はい。で、自分はラクに攻められるし、さっきの行くところで行かないとダメ、というのも感じられたんで。
――3年前に三迫ジムに移籍して、ずっと取り組んできたのが気持ちの部分を含めて、前に攻めることで、次の韓選手は、距離を取って、巧いボクシングもするし、距離を詰めて、前にも攻めてもくるし、いろいろな展開が考えられる分、これまでやってきた成果を含めて、試されるし、見せることができそうですね。 川浦 そうですね。できると思いますし、どんな展開になっても大丈夫です。
――白石戦後の控え室では、三迫会長が世界上位ランクに相応しい試合を、と注文していましたが、丸山トレーナーが求めるところも同じだと思います。 川浦 そうですね。まずは勝つことですけど、(今回のテーマの)ブレずに自分が持ってるものを出せば、(自ずと)そういう試合になるということでもあると思うんで、しっかり期待に応えたいと思います。
――韓選手はIBF7位で、勝つことで可能性が広がる試合にもなりますね。 川浦 同じ勝つなら、世界ランクに入ってくれてたほうがいいですよね。3月で32歳になりますし、前にも言ったかもしれないですけど、日本タイトルで負けたときから、次、負けたら終わり、常に崖っぷちの気持ちでやっているんで。ずっと勝ち続ければ、いつかは夢の世界チャンピオンに挑むチャンスが来ると思ってるんで。負けられないです。
――「夢の世界チャンピオン」ということですけど、長かった髪を急に短く切られて、お父さんにジムに連れて行かれたのが夢の始まりで。 川浦 あ、そうです。急に髪を短く切られて。ありがとうございます。よく覚えていただいて(笑い)。あれは小学5年生に上がるタイミングで、ワケも分からないまま連れて行かれました。
――最初は嫌々というか(笑い) 川浦 嫌々でした(笑い)。自分からやりたいと言ったわけじゃなく。
――あれから20年以上ですか。徳島にベルトを持ち帰ると何か感じるものがあるんじゃないですか。 川浦 そうですね。ベルトを持って、昔、通ってたチカミジムとかに行ったりすると、みんなが喜んでくれますし。そこで、やっぱり、世界まで行かないとな、というのは思いますね。
――帰るたびに。 川浦 まあ、勝って、ホッとして、徳島に帰って、1回、1回、おめでとう、と喜んでもらえるんですけど。一番は、そうなることを応援してくれてますからね。
――東京と徳島では受け取るものも違うでしょうね。 川浦 そうですね。今のベルトも珍しいというか、ビックリして見てくれるんで、よかったな、と思うんですけど。これが世界のベルトだったら、もっといいなというか。特別じゃないですか、世界チャンピオンって。だから、そこまで行かないとな、という気持ちになるんで。そのためにも勝ち続けないといけないです。