生きる(1952)
もうすぐ黒澤明監督『生きる』のリメイクが日本公開される。南アフリカ出身のオリバー・ハーマヌス監督とノーベル賞作家カズオ・イシグロという異色コンビでリメイクされるので期待している。黒澤明版は中学3年生ぐらいの時に鑑賞して、「かったるい」印象を受けた。黒澤明映画は、やたらとセリフが聞き取り辛い作品が多く、中学時代にアレルギーを患ってしまった。 「死ぬまでに観たい映画1001本」 掲載作品でもある本作、大人になった今観たら面白いのではと思って鑑賞したところ、凄まじい作品であった。単に、社会の歯車が公園を作る話ではなく、そこに至るまでの演出が独特で、再考する必要を感じた。今回は ネタバレあり で書いていく。
『生きる』あらすじ
絶望の先、悦楽の先にあるもの
レントゲンの写真を提示し、 「これはこの物語の主人公の胃袋である。噴門部に胃癌の兆候が見えるが、本人はまだそれを知らない」 とナレーションは語る。志村喬演じる市民課長・渡辺が膨大な書類に埋もれながら退屈そうにハンコを押す場面を映す。ナレーションは 「しかし今、この男について語るのは退屈なだけだ。なぜなら、彼は時間を潰しているだけだ。彼には生きた時間がない。つまり、彼は生きているとは言えないからである。」 と辛辣なコメントを残す。その代わりに、部署内を案件がたらい回しにされていく様子が描かれる。彼が人間の心を失うには説得力しかない面倒臭さが提示されるのだ。
映画はそこから長い長い寄り道を始める。恐らく、リメイク版ではカットされると思うほどに長いのだ。会社を無断欠勤して、残りの人生を生きようとするが、生を失ってしまった彼にとって上手く遊ぶことができない。そこで飲み屋で出会った小説家に懇願して生きる楽しさを教えてもらおうとする。この小説家が、 メフィスト のような立ち回りをする。彼を、パチンコ屋やビアホールなどといった悦楽の場へと導くのだ。そして、彼は悦楽に溺れ、目がギョロッとした怖いものへと変貌していく。彼自身がメフィストとなり、今度は役所をやめた小田切を悦楽の道へと誘うが、彼女は玩具会社での仕事に情熱を注ぎ、渡辺の奇行に嫌悪の眼差しを向けるのだ。ふたりが対峙する時、奥ではどんちゃん騒ぎしている女性が映し出される。それは快楽に溺れた者の像ではなく、何かを成し遂げたであろう者の像が映し出される。その煌びやかさと対照的に、悦楽の虚無に陥った者のヒリついた空気が迸るのである。
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