. Prema』全曲レビュー【前編】 - 僕はレベル40
Prema』全曲レビュー【前編】 - 僕はレベル40
Prema』全曲レビュー【前編】 - 僕はレベル40

音楽史に刻まれた究極の九曲──藤井風『Prema』全曲レビュー【前編】

Why don't we both come outta, casket girl?

そしてアルバムの始まりを奏でるイントロがまず最高ですよね。このブチ上げ感を聴いた時既に「あぁ、勝ったな」と思った。(何に?

とはいえ、ただ能天気なアゲ曲な訳がなく特に声に憂いや闘志も聴いてとれる。何しろ"demise"=「終焉」とかいう単語を使ってるし。

ってか"gorgeous eyes"と"Are my demise"でライミングされたの絶対世界初。"ai"の母音続くの気持ちいい。一曲目からこういうセンス、「あぁ、貰ったな」と思ったよね(何を?

そして『I Need U Back』への繋ぎも最高これこそがアルバムで聴く意義よね。

呼び水としてアラカルトやビュッフェ形式で楽しむのはイイんだけど、やはりアルバムという「コース料理」として楽しむのが一番美味しいんですよ。古い考えって言われても一番美味しく食べたいじゃんね。

02. I Need U Back

当時界隈に衝撃を与えたあのNスぺでも印象的に作成プロセスをを見せてもらっていたこともあり、特に思い入れが強い。「Never wanted nothin' like I want you tell me "You'll be mine"」の"You'll be mine"、どうしても2回歌っちゃう。

さて、藤井風。完全にガス欠。音楽が作れない。情熱が死んだ。そんな彼を蘇らせるアルバム通して最も"Energetic"な楽曲。

まずニヤリとするのはタイトル的にジャクソン 5の"I Want You Back"を意識してそう。でも"Want"よりも強い"Need"を用いて、「帰ってほしいの」どころか「あんたが絶対必要や!」っていう切迫感がジャクソンズ超え。

NJSは80年代後半から90年代前半を席巻したスタイルで、跳ねたビートとスイングが特徴。僕の母がエアロビックスで楽しそうに踊ってたような幼心を覚えてる。

記憶に新しいところで、ブルーノ・マーズがカーディ・Bをフィーチャーした『Finess』でのNJSリバイバルもあったし、20年代に入ってからはなんといっても風さんも好きを公言するNewJeansのSupernatural』が世界的にヒットしたのも潮流的にはとても重要。

この『Supernatural』を手掛けたのが、何を隠そう『Prema』全曲を手掛けた250(イオゴン)なのよ。全ては偶然じゃなく必然で繋がっているって訳さ。

アルバム全体を通してジャム&ルイスだったりテディー・ライリーの音作りにインスピレーションを受けてそう感MAX。以前から歌唱で「フェイク」を多用していたが、特に今回の80-90'sフィールと相性が良いってのもあるよね。きっと風&250コンビが自身のルーツやスタイルを発揮し、最も楽しく作ったであろう楽曲がこの『I Need U Back』なのかも。

恋愛のベールも被りつつ、風氏本人の境遇を反映。そして、とかくネガティブな言説が蔓延しちゃうご時世に対して、あの時代のポジティブな愛を、エナジーをもう一度!ってな具合に発散させる多層的な意味を持つ楽曲だと思う。

あと、アウトロのジャーンからの笑い声好きすぎ。僕、「レコーディングのええ感じな空気感保全推進委員会」の副委員長やってるんで入りたい人は教えてください。

03. Hachikō

さーてハチ公。アルバムでの流れがまたイイんだわ。1,2曲目で取り戻そうとした真の自分側からのアンサーとしての"You've been patiently waiting for me"って感じでさ。勿論、アルバムを待ち続けた僕らの心情とマッチし過ぎるしね。

そして唯一、「日本語」が含まれる楽曲でもある。今にして思えば、6月にこの楽曲が最初にリリースされたのは日本語詞と英語詞のブリッジを折衷的に担ってくれたのかもしれない。アルバムで一番、2025年を感じる楽曲でもある。

個人的にはイントロのギター無いのがが寂しく思えちゃうほど、ヨーロッパ/NAツアーを経て強さが増している楽曲で、今後もツアーの推進力を担う一曲になりそう!マジで藤井風、現在進行形で化けてってます

04. Love Like This

アルバム全体で聴くと他の曲とも異質というか…Spotifyのライナーボイス+によると岡山時代から温めていた、アルバムで一番古いメロディなんだとか。

自分、よく音楽を料理に例えちゃうんですけど、この楽曲はじんわり野菜を煮込んだラタトゥイユスープ。バズ狙いのソース味ドバドバ楽曲が多い昨今、こういう時間をかけて血液に溶けてゆくような楽曲があると救われる。

ちなみに、ラタトゥイユって本場では「野菜にハーブとオリーブオイルはマスト」っていう三位一体の掟があるらしいんですけど、この曲もメロディ・ハーモニー・リズムの三位一体で完成してるから、ほぼ南仏のシェフ藤井風。MVは"グランメゾンKAZE"でも良かったかもしれん。

05. Prema

90's HIPHOPをベースにしたスピリチュアルボースティング曲という新しすぎるジャンル。それなんぞ?という人がほとんどだと思うんだけど、HIPHOPには自分がいかにイケているかをアピールする"Boasting"という文化がある

じゃあ何を誇っているかというと自分の信念を強く表明する

I don't lie I'm all about the truth, and I don't hide Overwhelmingly I'm open

嘘をつかず、隠れもせず、圧倒的にオープンであること。かっけぇ…こんな事を最前線のPOP歌手が楽曲中で表明するかね

Don't you know that I am love itself

Can't you see that I am god itself

風史上、個人的最ブチ上がり転調音楽的にもテンションも"Highest"に達したところで、歌詞も連動しついに主語が"You"から"I"にトランスフォーム!自身は"love"その者であり"god"そのものであるという精神的な誇りを歌う。

ちなみにこの"god"は小文字にしており、"GOD"とは明確に使い分けている。大文字にすると「特定の宗教における神」というニュアンスになるが、小文字にすると精神的な神様≒"Higher-self"的な意味となっていると解釈している。また、"god"はHIPHOPスラングで「尊敬する仲間」や「自分の力を信じる象徴」として使われることもあったりする。*3

サウンド的に唸ったのは、特にビートに様々な大ネタがサンプリング*4されていること。特に刺さったのはパブリック・エネミーの"Don't believe the Hype"かな。

ちなみに鍵盤とHIPHOPは相性が良くってClassic中のClassic、『Still D.R.E.』とかもピアノがフィーチャーされつつ、ドラムの鳴りが凄かったりする。『Prema』の編曲にも確実に影響を与えてるはず。やはりドレーを愛する漢は信頼できる。

  • アーティスト: 藤井 風
  • UNIVERSAL MUSIC GROUP

*3 : Wu-Tang Clanの"Five Percent Nation思想"とかを勉強してみるとより深堀りできるかも。

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