一生に一度は見たい、東博の人気No.1 国宝「松林図屛風」(東京国立博物館)
「通常、日本の屛風作品は右から左に見ていきます。季節の移ろいのような時間の経過が右から左へ表現されるからです。しかし、《松林図》はちょっと違います。時間の経過が表れているわけではない。絵の中に時間がないのか、それとも時間が止まっているのか。それも分からない。それでも時間は流れているのかもしれない。何と言えばいいのか。日本画の約束事に縛られていない絵なのです。ですから、この絵については見た人がいくらでも解釈できる余地がある。つまり、誰もがこの絵の謎に挑むことができる。専門知識のある人もそうでない人も同じ位置に立って見て感じることができるのです。
あえて、プロっぽい意見を言うなら、この絵は水墨画です。モノクロの画面です。そして、水墨画とは墨の色だけで数多くの色を見せようとするイリュージョンなんです。《松林図》でも墨を濃くしたり、薄くしたりすることで、見る人の脳内で色を想起させる。私自身は色を脳内変換することがあまり得意ではなくて、ついつい色の付いた絵が好きになってしまうのですが……」
「まあ、それはいいとして、《松林図》は見ていると、色も見えてくるし、松に吹く風を感じることもできる。モノクロの絵なんですが、墨の色のグラデーションが繊細です。実に細かく墨の濃淡をつけている。それで立体感、奥行きが出てくるのです」
「専門家としてはお手上げ」と言いながら、土屋さんは墨の色のグラデーションを観察するといいでしょう、と教えてくれた。水墨画では墨の色に注視することを記憶しておこう。
長谷川等伯と七尾
等伯は中国・南宋時代の画僧、牧谿(もっけい)に私淑していた。牧谿の水墨技法による自然描写、とりわけ大気の表現を学んでおり、《松林図》にはその影響が見られる。ただ、等伯は水墨画だけを描いたわけではない。京都の智積院には彼の作品で金碧障壁画の《桜楓図屛風》がある。金箔を押した上に多彩な絵の具で描いたもので、こちらもまた国宝だ。色が付いた絢爛な絵で、それもまた等伯の才能を表している。
七尾に等伯が描いた松はあるのか?
土屋さんは「《松林図》は下絵だったのではないかとも言われています」と教えてくれた。
わたしは《松林図》の実物の前に立った時、単なる絵とは思えなかった。絵であり、映像でもあると思った。じっと見ていると、松の木が前にせり出してきたり、また、後ろへ行って、かすんだようにもなってしまう。《松林図》では松が動く。画面のなかの松が動き出すのがなんとも不思議だった。そして、そのまま見ていると、松の背後に浜辺と海が見えてくる。もっともこれはわたしの感想だ。だが、同じように、海と浜辺が見えてくる人は少なくないようだ。
そのため、わたしはこの作品を見た時、「小雨が降る海岸に生えた松の絵」だと思った。無数の微小な水滴が浮遊している大気のなかに松が生えていて、松の向こう側には海岸がある。その海岸は長谷川等伯が生まれた七尾の日本海ではないかと思えてならなかった。
- 東京国立博物館・本館2室にて、所蔵の国宝を順次公開。2026年1月1日~2026年1月12日は長谷川等伯《松林図屛風》を展示している。※1月1日のみ、開館13時
Mar 24, 2026, 9:00 PM
Mar 13, 2026, 9:00 PM
Mar 6, 2026, 9:00 PM
Feb 20, 2026, 9:00 PM
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