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剪定時期をめぐる議論。ブドウの枝はいつ切るべきなのか

ところが最近はブドウの収穫を終えてもいつまで経っても霜がおりず、葉が枝に残り続けています。そうした一方で春先の気温の上がりが早くなったためにブドウの樹の活動開始時期が早くなり、萌芽の時期が前倒しになり続けています。 以前と同じ面積の、同じ本数の枝を剪定するにしても作業にかけられる時間が大きく減ったため、その分作業量を上げるために人手を集める必要にせまられる ことになります。合計の作業量は変わらなくてもそこにかけられる時間が減った分、人手を集める必要からコストが大きく膨らむ結果になっています。しかも以前からの人手不足があるため、作業者の需要が集中するこの時期にはまさに人手の取り合いが発生します。これもまた、コスト引き上げの要因となっています。

最近では必要なだけの人手が確保できなかったワイナリーや、人手はある程度確保できたものの所有面積が大きく絶対的な作業量が多いワイナリーなどでは 剪定がブドウの萌芽までに間に合わないケースが増えてきています 。ブドウの休眠期中には本来は剪定だけではなく、別の作業をする必要もあるのですが、剪定の遅れによってそうした次の作業に取り掛かることができず畑作業全体の遅れにつながっている場合も少なくないのが実情です。こうした遅れが生じた場合、どこかの時点でさらに人手を集めて一気に遅れを解消する必要があるため、さらに人件費が増えるという負の連鎖につながっています。

なぜ剪定は落葉後、なのか

現在、ワイナリーが抱える問題の根本は剪定にかけられる時間が大きく減っているという事実です。逆に言えば、 仮に剪定の時間をより多く取ることができるのであれば労働量の分配が可能となり、瞬間的に必要になる人手が減ります 。つまり、外部から人を単発で雇って枝を切る、という必要がなくなり人件費をおさえることができるようになります。

通説を巡る根拠を考える

光合成による樹への糖の蓄積といったブドウの生理的な面に関わらない理由としては、 作業者と作業時間の関係 があります。

剪定期間は延ばせるのか

ブドウの枝を切る期間を延ばすための試みはすでにいろいろ検討されてきています。そうした検証では開始時期を早める方向と、終了時期を遅らせる方向のどちらも行われていますが、現状、 作業時間を確保して労働分配をするという目的に対して比較的有望と思われるのは前者、開始時期を前倒す方向 です。

しかしこれまでに検証が行われ、報告されている結果にはばらつきが大きく、 地域性や品種による違いが比較的大きく存在している ことがわかっています。また剪定の開始時期を早めても影響がなかった場合もあれば、翌年以降に収量が大きく減少したという報告もあり、安易な決定は大きな悪影響を及ぼす可能性が示唆されています。

剪定の開始時期に関しては畑の所在地やそこに植えられているブドウ品種の特性を加味した総合的な検討が必要になります。さらに生育期間中における栽培方法からも影響が出る可能性も示されており、判断は簡単ではありません。しかしそうした困難がある一方で、 現在のワイナリーが抱えている大きな問題の1つを解消まではできないにしてもかなり縮小できる可能性がある手法として、剪定開始時期の早期化には取り組む意味がある といえます。

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剪定自体に対する考え方を変える可能性もある

従来の考え方に基づけば、良質のブドウを収穫するためには剪定は欠かせない作業です。しかもそれだけ重要な作業であるため、作業者に求められる知識や経験も重要で、いかに良質な仕事をできるのかが常に問われてきました。 剪定とは単に枝を切る作業ではなかった のです。

そうした変化の1つとして、 従来のような剪定をしない栽培方法が広まってきています 。従来通りの剪定をしないこの栽培方法では剪定のための時間と労力を大きく削減できます。剪定をまったくしないわけではないため剪定のためのコストがゼロになるわけではありませんが、 ある調査では40%のコスト削減につながったとの報告 もあります。

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