. NOT回路」の解説(3) - しなぷすのハード製作記
NOT回路」の解説(3) - しなぷすのハード製作記
NOT回路」の解説(3) - しなぷすのハード製作記

「NOT回路」の解説(3)

この回路図は、トランジスタの動作原理を説明するための、原理説明図です。この回路図通りの回路で電流増幅の実験などを行うと、 VBE が0.6Vを超える付近で、急激にNPNトランジスタに流れる電流( IB や IC )が増え、簡単にトランジスタが発煙・発火します。実際に実験などを行う場合は、 VBE を印加するための電源とベースの間に抵抗を挿入するなどして、 IB の増加が緩やかになる工夫をします。電源とベースの間に抵抗が挿入されていても、トランジスタのベース-エミッタ間につないだ電圧計の測定値を VBE とすれば、正しい測定結果が出ます。

VCE を一定に保ち、 VBE を0Vから徐々に増加させると、ベース電流 IB も、 VBE の増加につれて増加します。その様子をグラフ化したのが図39です。

↑ 画像をクリックすると拡大 図39、 IB - VBE 特性

図39の特性は、PN接合 ダイオードとほぼ同じ特性です。 VBE が約0.6Vに達するまでは IB ≒0 とみなせるものの、 VBE が約0.6Vを超えると、急激に IB が増加します。

VBE が約0.6Vより低く、 IB ≒0 とみなせる場合は、コレクタ電流 IC についても IC ≒0 とみなせるのですが、 VBE が約0.6Vを超えてくると、 IB が流れ始めるのが呼び水になって、 IC も流れ始めます。この時に、きっかけになった IB よりも、 IB に誘われて流れ始めた IC の方が桁違いに大きいのがポイントです。

IB と IC の関係を示したのが図40です。

↑ 画像をクリックすると拡大 図40、 IC - IB 特性

こういう測定をする場合はベース電流をμA単位で表記し、コレクタ電流をmA単位で表記する場合が多く、図40もそれにならっています。そのためグラフを見ても IC が IB より桁違いに大きくなっている感じがしませんが、実際には IC の方がはるかに大きな電流です。

図40の様に、 IC は IB におおむね比例して増加し、その比例係数は、と呼ばれます。エミッタ接地電流増幅率は通常 hFE という記号で表わされ、その値はトランジスタによって異なるものの、数十~数百くらいの値になります。

参考:電流増幅回路を設計するなら hFE の値が重要になりますが、NOT回路の設計をする場合に、 hFE の値はあまり重要ではありません。 hFE ≫1の条件が成り立っていれば(市販のほとんどのトランジスタはこの条件を満たします)、NOT回路の特性は hFE の値にあまり影響を受けません。

IB が一定の条件で VCE を変化させても、 VCE が極端に低い領域を除くと、 VCE が変化しても、 IC はあまり変化しません。つまり、 IC はあまり VCE の影響を受けずに、主に IB により決まるという事です。

7-2. NOT回路の構成法

この様に、電流増幅作用を持つNPNトランジスタを使ってNOT回路を作る場合は、例えば図41に示す回路を使います。この回路は、RTL (Resistor-Transistor Logic)と呼ばれる回路でNOT回路を構成した物になります。

↑ 画像をクリックすると拡大 図41、NPNトランジスタを使ったNOT回路(その1)

ベースに接続された抵抗 RB は、入力電圧 VIN が約0.6Vを超えても、急激にベース電流 IB が増えて、NPNトランジスタが過熱しない様に、電流制限の目的で用いられており、ベース保護抵抗と呼ばれます。

コレクタと電源電圧 VCC の間の抵抗 RC はコレクタ抵抗と呼ばれ、コレクタ電流 IC が流れた時に、電圧降下 RC IC を発生して出力電圧 VOUT を下げる働きをします。つまり、出力電圧 VOUT は、式(2)により求まります。

VOUT = VCC − RC IC ・・・ (2)

RB の値は RC の値との比で決めます。おおむね RB は RC より一桁大きな値にします。例えば RC =1[kΩ]として設計するなら、 RB =10[kΩ]などとします。(厳密なものではないので、 RB =5[kΩ]でも RB =20[kΩ]でも動作します)

入力電圧 VIN と出力電圧 VOUT の関係をグラフ化したのが図42です。

↑ 画像をクリックすると拡大 図42、図41のNOT回路の入出力特性

入力電圧 VIN が約0.6V以下の領域では、ベース電流 IB が流れないので、コレクタ電流 IC も流れず、コレクタ抵抗に電圧降下は発生しません。そのため出力電圧 VOUT は VCC になります。

ところが、入力電圧 VIN が約0.6Vを超えると、急に IB や IC が流れ始め、 VOUT が急降下します。

しかし、 VOUT が0Vに近づくと、 VOUT の降下が止まります。

VIN の上昇に伴い、なぜ VOUT が降下するかというと、 IC が増加するからでした。(式(2)を参照) もともとなぜ IC が流れるかというと、トランジスタのコレクタ-エミッタ間に電圧 VCE が掛かっているのが原動力になっています。

図41のNOT回路では、コレクタ-エミッタ間電圧 VCE は、出力電圧 VOUT そのものです。 VOUT が0になれば、 IC は流れられないのです。

そういう理由で、 VOUT がほぼ0になると、 IB が増えても IC の増加しなくなり、 VOUT はそれ以上降下しなくなります。この現象を飽和といいます。

NPNトランジスタが飽和している時は、 IC = hFE IB という関係は成り立たなくなります。(あるいは、飽和が起こると hFE が低下するという表現もします)

VIN が0.6Vより大幅に高くても、 VOUT が完全に0Vになるわけではなく、トランジスタの種類や IC の大きさにもよりますが、0.1~0.3V程度の電圧は残ります。これをコレクタ飽和電圧と呼びます。

動作の説明が終わったところで、あらためて図42のグラフを見ると、入力電圧が約0.6Vより低ければ、出力電圧は VCC という高い電圧になります。つまり L を入力すれば H を出力するのです。

また入力電圧が0.6Vよりも十分高ければ、出力電圧は0.1~0.3Vにまで下がります。つまり H を入力すれば L を出力するのです。

ただ図41の回路は、電源電圧に対して閾値 ( L と H の境目の電圧で図42より0.6Vちょっとだと分かる)があまりにも低いのが、ノイズマージン の確保などの点で問題になる事があります。その場合は抵抗を1本増やして、図43の様な回路を使います。

↑ 画像をクリックすると拡大 図43、NPNトランジスタを使ったNOT回路(その2)

図43のNOT回路では、入力電圧 VIN を R1 と R2 で分圧 してからベースに入力するので、閾値をより高く設定できます。

8. NOT回路を2つ使った記憶回路

NOT回路を2つ使うと、1ビットの記憶回路を作る事ができます。この記憶回路は、各種フリップフロップ やSRAM が情報を記憶する原理になっている回路で、是非とも動作原理を理解しておきたい回路です。

8-1. 環状に接続したNOT回路は2つの安定状態を持つ ↑ 画像をクリックすると拡大 図44、2つのNOT回路を環状に接続した回路 ↑ 画像をクリックすると拡大 図45、図37の回路の安定状態その1 ↑ 画像をクリックすると拡大 図46、図37の回路の安定状態その2

仮に今、図45の様にU1の入力が L だと仮定すると、U1の出力は逆の H になります。U1の出力はU2の入力に接続されていますから、U2の入力も H になります。そうすると、U2の出力は逆の L になります。U2の出力はU1の入力に接続されていますが、どちらも L なので、矛盾は発生せず、安定状態(時間が経過しても変わらない状態)になります。

次に今、図46の様にU1の入力が H だと仮定します。今度はU1の出力は、入力の逆の L になります。U1の出力はU2の入力に接続されていますから、U2の入力も L になります。そうするとU2の出力は、入力の逆の H になります。U2の出力はU1の入力に接続されていますが、どちらも H なので、矛盾は発生せず、安定状態になります。

このままでは図44の回路に利用価値はなさそうですが、少し手を加えると、2つの安定状態の間を、任意のタイミングで、強制的に遷移させる事ができるようになります。そうなると、2つの安定状態に 0 と 1 と(あるいは L と H と)を対応させて、1ビット の情報を記憶する記憶回路として利用する事ができます。

8-2. 2つのNOT回路を使った記憶回路の構成法 ↑ 画像をクリックすると拡大 図47、図44の回路に2つの抵抗と2つのスイッチを追加して作った1ビット記憶回路(RSフリップフロップの一種)

2つのプッシュスイッチをOFFのまま放置すると、図47の回路は、図48に示す H を出力する安定状態と、図49に示す L を出力する安定状態の、2つの安定状態を取り得ます。

↑ 画像をクリックすると拡大 図48、 H を出力する安定状態 ↑ 画像をクリックすると拡大 図49、 L を出力する安定状態 ↑ 画像をクリックすると拡大 図50、SW1をONにした状態(セット)

SW1がONになると、U2の出力が L であれ、 H であれ、U1の入力を強制的に L にする事ができます。そうすると、U1の出力は、入力の反対の H になります。R1には電流が流れませんので電圧降下は発生せず、U1の出力の H は、そのままU2の入力に伝わります。そうすると、U2の出力は、入力の反対の L になります。

この様に、SW1をONにしてOFFに戻すと、直前に図48と図49のどちらの安定状態であったかに関わらず、図48の安定状態に移行する事を強制できます。この操作を、出力に H が出る様になる事を考慮して、セットと呼びます。

図47の回路をセットするというのは、出力が H になる安定状態に強制的に移行させるという事ですが、これを2進数の 1 を記憶させる動作だと解釈する事にします。( 正論理 の場合は、電圧 H は2進数の 1 に対応します)

↑ 画像をクリックすると拡大 図51、SW2をONにした状態(リセット)

SW2がONになると、U1の出力が L であれ、 H であれ、U2の入力を強制的に L にする事ができます。そうすると、U2の出力は、入力の反対の H になります。R2には電流が流れませんので電圧降下は発生せず、U2の出力の H がそのままU1の入力に伝わります。そうすると、U1の出力は、入力の反対の L になります。

この様に、SW2をONにしてOFFに戻すと、直前に図48と図49のどちらの安定状態であったかに関わらず、図49の安定状態に移行する事を強制できます。この操作を、出力に L が出る様になる事を考慮して、リセットと呼びます。

図47の回路をリセットするというのは、出力が L になる安定状態に強制的に移行させるという事ですが、これを2進数の 0 を記憶させる動作だと解釈する事にします。( 正論理 の場合は、電圧 L は2進数の 0 に対応します)

この様に図47の回路は、SW1のボタンを押すとセット( 1 を記憶させる事)ができ、SW2のボタンを押すとリセット( 0 を記憶させる事)ができますが、この回路は、 RSフリップフロップ と呼ばれる回路の一種です。

8-3. 双安定マルチバイブレータ ↑ 画像をクリックすると拡大 図47(再掲)、図44の回路に2つの抵抗と2つのスイッチを追加して作った1ビット記憶回路(RSフリップフロップの一種) ↑ 画像をクリックすると拡大 図41(再掲)、NPNトランジスタを使ったNOT回路(その1) ↑ 画像をクリックすると拡大 図52、NPNトランジスタで構成したRSフリップフロップ ↑ 画像をクリックすると拡大 図53、双安定マルチバイブレータ

関連用語

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