NASAがアルテミス計画の見直しを発表 月面着陸を2028年に先送りし地球低軌道でテスト実施へ
NASAによると、新たな役割を与えられたArtemis IIIミッションでは、Artemis計画の有人月着陸船「HLS」として開発が進められているSpaceX(スペースX)の「Starship HLS(スターシップHLS)」と、Blue Origin(ブルーオリジン)の「Blue Moon(ブルームーン)」の両方またはどちらかが打ち上げられ、新型宇宙船「Orion(オリオン、オライオン)」とのランデブーおよびドッキングが行われます。
Artemis IIIにおける地球低軌道でのテストを経て、NASAは2028年に実施予定の「Artemis IV(アルテミスIV)」で月面着陸に挑むことになります。この変更により、Artemis計画初の有人月面着陸は、実質的に1年先送りされる形となりました。
【▲ 見直し後のArtemis(アルテミス)計画を表現したイメージイラスト。2026年実施予定のArtemis IIは有人飛行試験として月周辺への往復飛行、2027年実施予定のArtemis IIIは有人月着陸船の地球低軌道でのテスト、2028年のArtemis IV以降は年1回以上のペースを目指して有人月面着陸を実施する予定であることが描かれている(Credit: NASA)】
打ち上げ間隔の短縮とロケット構成の標準化
この課題を解決するため、NASAはOrion宇宙船の打ち上げに使用する大型ロケット「SLS(Space Launch System、スペース・ローンチ・システム)」の機体構成をなるべく変更せず、標準化された上段(2段目)を使用していく方針を明らかにしました。ミッションを経るにつれて機体をアップデートしていくのではなく、設計変更を最小限に抑えることで製造や準備のペースを早め、将来的には1年以内の間隔でミッションを実施できる体制を整えるとしています。
従来の計画では、無人飛行試験として実施された「Artemis I」ミッションからArtemis IIIミッションまでの3回はSLSの上段(2段目)に「ICPS(Interim Cryogenic Propulsion Stage)」を使用する機体構成「Block 1(ブロック1)」が使用され、Artemis IVミッション以降は上段をより高性能な「EUS(Exploration Upper Stage)」に変更した機体構成「Block 1B」や「Block 2」が使用されていくことになっていました。
【▲ SLSロケットで構想されていた機体構成の発展を示した図。一番左が現在使用されているBlock 1(Crew)で、その後は上段(2段目)を強化したBlock 1BやBlock 2へと発展させていく予定だった(Credit: NASA)】
段階的なアプローチで2028年の月面着陸に挑む
長官の発言が意味するところは、内容が変更されたArtemis IIIミッションに強く現れています。アポロ計画の歴史に当てはめると、間もなく実施される予定のArtemis IIミッションは人類初の有人月周回飛行を成し遂げた「アポロ8号」に相当し、新たな役割を与えられたArtemis IIIミッションは地球低軌道で司令船と月着陸船のドッキングを含むテストを行った「アポロ9号」に相当します。初の有人月面着陸を成し遂げたアポロ11号に相当するミッション(見直し後のArtemis IV)を実行する前に、地球の近くで機器の試験や手順の確認を行うプロセスを挟むことで、ミッションのリスクを減らし、安全性を高める狙いがあるわけです。
なお、NASAは2028年に最大2回の月面着陸の機会を設けることを目指しているということです。Artemis IVミッションだけでなく、状況次第では次のArtemis Vミッションも2028年のうちに実施されることになるかもしれません。
【▲ 1969年3月に実施されたアポロ9号にて、月着陸船とドッキングした司令船のハッチを開いて船外活動を行う宇宙飛行士。アポロ計画ではこの後の同年5月に実施されたアポロ10号で着陸前のリハーサルを行い、同年7月のアポロ11号で有人月面着陸に成功した(Credit: NASA/Russell L. Schweickart)】
HLSの開発状況がキーポイントに?
従来の計画では、Artemis IIIとArtemis IVではStarship HLSが、Artemis VではBlue Moonが使用される予定でした。前述の通り、計画見直し後の新たなArtemis IIIではこれら2つの着陸船の「両方またはどちらか」を用いた試験が地球低軌道で行われる予定であり、実際にどれが打ち上げられるかは現時点では未定です。
とはいえ、推進剤補給などのテストを省略してArtemis IIIの実施にこぎつけたとしても、リスク軽減と安全性向上を重視する以上、月面着陸に必須となる機能・能力についても、いずれどこかでテストを行わなければなりません。計画の成否に関わるSpaceXとBlue Originが、Artemis IIIやその先のミッションに向けてどのような対応を行うのか、両社の動向にも引き続き注目です。
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