Mr.Children 桜井和寿、56歳の“産声” ポップス史を体現する軌跡、終わりなき旅を更新し続ける説得力
そして50代。2023年のアルバム『miss you』で彼が見せたのは、パーソナルで剥き出しの孤独だった。あの作品で彼は、一度“国民的バンドの桜井和寿”という象徴的な鎧を脱ぎ捨て、ひとりの人間として歌うことを選んだのだと筆者は思っている。その孤独の旅を経て、今、私たちはかつてないほど開かれた彼の姿を目撃しているのかもしれない。直近の活動を振り返れば、その充実ぶりには目を見張るものがある。特筆すべきは、2025年2月に開催された『ap bank fes '25 at TOKYO DOME 〜社会と暮らしと音楽と〜』だ。
『ap bank fes '25』はなぜ東京ドームだったのか 20周年を迎えた歴史と縁、Bank Band「カラ」へと帰結するメッセージ 2月15日・16日の2日間、東京ドームにて開催された『ap bank fes '25 at TOKYO DOME ~社会と暮らし…これまでの自然豊かな環境から一転、屋内の東京ドームを舞台に選んだことは大きな驚きを与えたが、あの大空間で鳴り響いたBank Bandによる演奏は、利便性や効率を優先する現代社会のど真ん中に利他の精神を突き刺すような、強い説得力に満ちていたのだ。万単位の観客とともに声を上げようとする彼の姿は、音楽による連帯の可能性を改めて確信させるものだった。宮本浩次との「東京協奏曲」で見せた圧倒的な熱量や、東京スカパラダイスオーケストラとの「リボン feat. 桜井和寿(Mr.Children)」」で見せた弾けるような笑顔は、彼が今手に入れた“自由”そのものであった。
「東京協奏曲」宮本浩次 × 櫻井和寿 organized by ap bankまた、2025年10月に行われた桑田佳祐主催の『TOKYO FM 開局55周年×「桑田佳祐のやさしい夜遊び」放送30周年 九段下フォーク・フェスティバル’25』へのサプライズ登場も、音楽ファンを大いに沸かせた。日本武道館という音楽の聖地にアコースティックギター1本を抱えて現れた彼は、桑田とともに「HANABI」(Mr.Children)や「慕情」(サザンオールスターズ)、さらには19年ぶりとなる「奇跡の地球」を披露。そこにあったのは、ただ音楽を愛し、歌うことを悦びとする音楽少年の純粋な顔だった。その純粋な心こそこそが、現在の彼の最大の武器なのだろう。