【かんたん解説】MOSFETのスイッチング損失の計算方法
上記の不定積分より、t 1 からt 2 の定積分を求める(つまり、t=t 2 -t 1 を代入する) 電力量 =(1/3)×(V 2 -V 1 )(I 2 -I 1 )(t 2 -t 1 ) 3 /(t 2 -t 1 ) 2 + (1/2)× ( I 1 ・(V 2 -V 1 )/(t 2 -t 1 ) + V 1 ・(I 2 -I 1 )/(t 2 -t 1 ) ) (t 2 -t 1 ) 2 + V 1 ・I 1 ・(t 2 -t 1 )=(1/3)×(V 2 -V 1 )(I 2 -I 1 )(t 2 -t 1 ) + (1/2)× (I 1 ・(V 2 -V 1 ) + V 1 ・(I 2 -I 1 )) (t 2 -t 1 ) + V 1 ・I 1 ・(t 2 -t 1 )=( (t 2 -t 1 ) /6 )
電力P[W]=電力量/Tより、P=( (t 2 -t 1 ) /(6T) ) ここで、t 2 -t 1 =T 1 に置き換えると、(1)式と一致します。
<オン区間> (2)式になる理由について説明します。
直線区間におけるI D は以下の式となります。 I= (I 2 -I 1 )t/(t 2 -t 1 )+I1
電力量[J]=R on ×I D 2 ×t は以下で表す事ができます。電力量=∫R on ×I D 2 dt=R on ×∫dt=R on ×[(1/3)×(I 2 -I 1 ) 2 ×t 3 /(t 2 -t 1 ) 2 +I 1 ・(I 2 -I 1 )/(t 2 -t 1 )t 2 + I 1 2 ・t]
上記の不定積分より、t 1 からt 2 の定積分を求める 電力量=R on ×((1/3)×(I 2 -I 1 ) 2 (t 2 -t 1 ) 3 /(t 2 -t 1 ) 2 +I 1 ・(I 2 -I 1 )(t 2 -t 1 ) 2 /(t 2 -t 1 ) + I 1 2 ・(t 2 -t 1 ))=R on ×((1/3)×(I 2 -I 1 ) 2 (t 2 -t 1 ) + I 1 ・(I 2 -I 1 )(t 2 -t 1 )+ I 1 2 ・(t 2 -t 1 ))=R on ×( (t 2 -t 1 ) /3)×(I 2 -I 1 ) 2 + 3I 1 ・(I 2 -I 1 )+ 3I 1 2 )=R on ×( (t 2 -t 1 ) /3 )×( I 1 2 +I 1 ・I 2 +I 2 2 )
電力P[W]=電力量/Tより、P=R on ( (t 2 -t 1 ) /(3T) ) ( I 1 2 +I 1 ・I 2 +I 2 2 )ここで、t 2 -t 1 =T 1 に置き換えると、(2)式と一致します。
測定波形から損失を計算する
ドレイン電圧V DS とドレイン電流I D の波形をオシロスコープで測定します。
ドレイン電流I D の測定は電流プローブを用いて下図のように行います。
<注意>FETを基板から外す時は基板を痛めないように注意が必要です。
特にドレインDと、ソースS端子は、パワー回路に接続されているので、パターンが太く、半田コテを当てても熱が上がらず半田が溶けにくい為、 無理に取ろうとすると、スルーホールやパッドごと取れてしまいます。
安全確実に部品を外すための道具については、下記記事で紹介しています。
基板の改造、部品交換に役立つ おすすめアイテム5点 回路設計業務30年の経験から厳選した回路基板工作おすすめアイテムを紹介 ケース1:PFC(力率改善回路)の場合 【PFC回路】BCM、CCMとは?力率改善回路の動作原理①ターンON及びターンOFF損失 (1)式 P=( T 1 /(6T) )[ ( I 1 ×(2V 1 +V 2 )+I 2 ×(2V 2 +V 1 ) ]から求めます。
ターンON損失はI 1 =I 2 =0Aなので、P=0(損失無し)
ターンOFF損失は V 1 =0V, I 1 =6.5A V 2 =400V、I 2 =0A T 1 =0.1μs より、
P=( T 1 /(6T) )[ ( I 1 ×(2V 1 +V 2 )+I 2 ×(2V 2 +V 1 ) ]=(0.1μs/(6×17.8μs))(6.5A×400V)≒2.43[W]
②オン損失 (2)式 P=R on ( T 1 /(3T) ) ( I 1 2 +I 1 ・I 2 +I 2 2 )から求めます。
I 1 =0A、I 2 =6.7AT 1 = 12μsR on =0.19Ω (データシートより)
P= R on ( T 1 /(3T) ) ( I 1 2 +I 1 ・I 2 +I 2 2 )=0.19(12μs/(3×17.8μs))(6.7 2 )≒1.92[W]
③ボディダイオードの損失 逆方向のドレイン電流は無い(I dsp =0A)ので、P=0(損失無し)
①~③より、スイッチング損失はP total =0+2.43+1.92+0 =4.35[W]となります。
ケース2:LLC(電流共振回路)の場合 【初級者向わかりやすく解説】LLCコンバータの動作原理①ターンON及びOFF損失 ターンON損失はI 1 =I 2 =0Aなので、P=0(損失無し)
ターンOFF損失は2区間に分けて直線で近似して求めます。
<区間1>V 1 =30V, I 1 =1.2AV 2 =40V、I 2 =1.0AT 1 =20ns より(1)式を用いて、
P=( T 1 /(6T) )[ ( I 1 ×(2V 1 +V 2 )+I 2 ×(2V 2 +V 1 ) ]=(20ns/(6×15.7μs))(1.2A×(2×30V+40V)+1.0A×(2×40V+30V))=(20ns/(6×15.7μs))(120+110)≒0.0488[W]
<区間2>P=( T 2 /(6T) )[ ( I 2 ×(2V 2 +V 3 )+I 3 ×(2V 3 +V 2 ) ]=(20ns/(6×15.7μs))(1.0A×(2×40V+80V))≒0.0339[W]
区間1+2の合計P=0.0488+0.0339=0.0827[W]
②オン損失 電流共振回路ではオン直後はドレイン電流がマイナス(逆方向)になる為、その区間はボディダイオードの損失③になります。
<区間1>I 1 =0A、I 2 =0.5AT 1 = 2.6μsR on =0.19Ω (データシートより)
(2)式より、P=R on ( T 1 /(3T) ) ( I 1 2 +I 1 ・I 2 +I 2 2 )=0.19(2.6μs/(3×15.7μs))(0.5 2 )≒0.0026[W]
<区間2>P=R on ( T 2 /(3T) ) ( I 2 2 +I 2 ・I 3 +I 3 2 )= 0.19(1.5μs/(3×15.7μs))(0.5 2 +0.5×0.7+0.7 2 )=0.19(1.5μs/(3×15.7μs))(0.74+0.35)≒0.0066[W]
<区間3>P=R on ( T 3 /(3T) ) ( I 3 2 +I 3 ・I 4 +I 4 2 )= 0.19(1.5μs/(3×15.7μs))(0.7 2 +0.7×0.3+0.3 2 )=0.19(1.5μs/(3×15.7μs))(0.58+0.21)≒0.0049[W]
区間1+2+3の合計P=0.0026+0.0066+0.0049=0.0141[W]
③ボディダイオードの損失 逆方向のドレイン電流I dsp =1.5At=1.4μsV F =1.7V (データシートより)
P=V F ×(1/2)I dsp ×t/T=1.7V×(1/2)×1.5A×1.4μs/15.7μs=0.114[W]
①~③より、スイッチング損失はP total =0.083+0.014+0.114 =0.211[W]となります。
エクセルシートを使った損失計算方法
V DS とI D のオシロスコープの波形から、読み取った値を入力することでスイッチング損失が計算できます。
①V DS 、I D のスイッチング波形をオシロスコープで測定します。 上記のケース1、2を参考にします。
②測定した波形とデータシートから、以下を求めます。 ・全体波形 スイッチング周期T ・ターンON及びターンOFF波形 V DS 及びI D を直線近似できるように分割します。 ・データシートより オン抵抗R on 順方向電圧V DSF (逆方向のドレイン電流がある場合)
③エクセルシートの太枠内に値を入力する。
★トランジスタやFETの設計方法についてのまとめ記事です。
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