. F1の改革が始まる前に、「F1グランプリ」の巨大興行ビジネスの歴史を振り返る。(辻野ヒロシ) - エキスパート - Yahoo! ニュース
F1の改革が始まる前に、「F1グランプリ」の巨大興行ビジネスの歴史を振り返る。(辻野ヒロシ) - エキスパート - Yahoo! ニュース
F1の改革が始まる前に、「F1グランプリ」の巨大興行ビジネスの歴史を振り返る。(辻野ヒロシ) - エキスパート - Yahoo! ニュース

F1の改革が始まる前に、「F1グランプリ」の巨大興行ビジネスの歴史を振り返る。

その一方で、近頃モータースポーツ専門メディアではF1の将来の方向性について議論が盛んになってきている。その理由は長年に渡りF1の商業面を取り仕切っていたバーニー・エクストンが今年1月に「フォーミュラ・ワン・グループ」のCEOを退任。同グループを買収したアメリカのメディア関連企業「リバティ・メディア」がこれからのF1の方向性を舵取りしていくことになったからだ。新オーナーに託されたF1のニュースを読む前に、改めてF1の興行面の歴史を振り返っておきたい。

そもそもグランプリとは?

「グランプリ(Grand Prix)」とはフランス語で「大賞」を意味する言葉として知られ、モータースポーツの世界では最高峰のレースイベントに使われるのが通例となっている。

当時のグランプリは国別の自動車レースという意味合いが強く、定められた国のカラーリング(ナショナルカラー)で出場し、そのタイトルを争った。まちまちの規定(レギュレーション)で開催されていたグランプリレースを統一し、1950年から始まった世界選手権シリーズが「フォーミュラ・ワン(F1)世界選手権」である。

ピュアな自動車の競争とノンタイトルレース

初期の「F1世界選手権」では「アルファロメオ」「フェラーリ」「マセラティ」「メルセデスベンツ」など現代でも名の知れた自動車メーカーのワークスチームのF1マシンが戦っていた。しかしながら、選手権はドライバーの獲得ポイントで争う「ドライバーズ選手権」のみ。車を製造するコンストラクター(製造会社の意味)が争う「コンストラクターズ選手権」が設定されたのは1958年からで、マシン作りに関して今のような細かい規定はなく、自由な発想で作られたF1マシンで争うという純粋な自動車レースだった。また、戦前と同じくナショナルカラーに塗られ、まさに国を代表する車が争うレースとして世界選手権シリーズが展開されていた。

そして、当時からF1では「F1世界選手権」の公式レースとは別に、F1規定のマシンで争う「ノンタイトルレース」がヨーロッパ各地で開催されていた。これらは主に各サーキットや自動車クラブなどの団体が主催する賞金レースで、初年度の1950年を見ると選手権の公式レースが全7戦(1戦はF1ではないインディ500で実質全6戦)だったのに対し、ノンタイトルレースは17戦も開催されていた。ノンタイトルレースにはフランスのポー市街地の「ポー・グランプリ」などF1の世界選手権が発足する以前からの伝統的なイベントが多く、1980年代まで開催されることになる。

広告塔としてのF1、興行としてのF1

ナショナルカラーをまとい、国の代表として戦った時代が変化するのが1960年代の後半である。F1マシンには徐々にスポンサーロゴがつき始め、F1は「走る広告塔」になっていく。1968年に名門チーム「ロータス」がタバコブランドのゴールドリーフのカラーリングを施して走るようになって以来、F1チームはスポンサーからの活動資金を基にレース活動を行うようになった。それと同時に賞金稼ぎも兼ねて参戦していたノンタイトルレースはエントリーするチームの減少により開催数を減らし、逆に「F1世界選手権」のシリーズ戦の数が増加した。ちなみに日本で初めてのF1レースが開催された1976年はシリーズ戦が全16戦、ノンタイトル戦は僅か2戦である。

その流れをまとめたのが当時、「ブラバム」のチームオーナーだったイギリス人、バーニー・エクレストンだ。エクレストンは元F1ドライバーであるが、引退後はマネージャー、ビジネスパーソンとして活躍。その商才が認められ、F1チームで形成された団体FOCA(Formula One Constructers Association、F1製造社協会)の会長に就任。レースを統括するFIA(国際自動車連盟)はFISA(国際自動車スポーツ連盟)を結成し、FOCAと激しく対立する。F1はFISA側の味方をするチーム、FOCA側のチームで一時、分裂の危機を迎えていた。

1981年に両者の間に「コンコルド協定」と呼ばれる取り決めが締結され、FOCAがF1の興行面、商業面の権利を持つことになる。こうしてバーニー・エクレストンはF1の実質的な権力者となり、F1全体を取りまとめて世界的なメジャースポーツへと成長させていくのである。

エクレストンの改革、F1の成長

リーマン後、F1バブル崩壊

F1の強烈な急成長にストップをかけたのが2008年のリーマンショック。ホンダ、トヨタをはじめ数多くの自動車メーカーがF1ワークス活動から撤退し、残ったのは「フェラーリ」「メルセデス」「ルノー」のみになってしまう。しかしながら、F1に流入した多額の資金によって高騰したコストはそれほど変わることなく、チームの運営予算は年間数百億円というのが今も当たり前になっている。

そして、リーマンショックから10年近く経ち、韓国、インド、トルコ、マレーシアなど新規に生まれたグランプリは次々に姿を消している現実がある。グランプリの開催権料が1開催につき30億円から40億円にまで高騰し、かつての日本のような大F1ブームが訪れなかった国々はとてもグランプリを維持することができない。

さらにテレビの放映権料も成長によって高騰を続け、日本ではフジテレビが無料放送を中止。多くのチームが本拠地を置くイギリスですら国営放送BBCが無料中継から撤退したのは近年、ファンならずともよく知られる通り。時代はインターネットが主流になり、スマートフォンなどのモバイル機器でSNSを介してスポーツを発信する時代が来たにも関わらず、エクレストンは放映権料を守るために映像の配信を厳しく制限し続け、インターネットメディアを排除しようとした。こうしてF1は完全に時代から取り残されてしまったのだ。

新オーナーは変化をもたらすことができるか

バーニー・エクレストンの引退によって、F1の新オーナーとなった米国の「リバティ・メディア」はテレビを通じたプロモーションに精通したグループである。日本でもテレビショッピングのチャンネルとしてお馴染みの「QVC」のオーナーであり、スポーツの世界でも「FOXスポーツ」の立ち上げを行い、米国MLBのアトランタ・ブレーブスのオーナーを務めるなど、巨大スポーツ団体と化したF1の舵取りを行うノウハウは持ち合わせている。それだけにF1の再興を願うチームの新オーナーへの期待は大きい。新CEOは同グループのチェイス・キャリーだ。

モータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト

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