ゴジラ-1.0の裏で平成VSシリーズを擦り続けたマクドナルド
ゴジラの快進撃にあやかるなら今だ!とばかり、映画公開後、各社・各団体がこぞって『ゴジラ-1.0』と自社商品とのコラボレーションを打ち出し始めた。 ゴジラにゴルフクラブを持たせ、眼鏡を踏ませ、銭湯へ行かせ、学舎を襲わせ……ピザーラが「うちの社名の由来はゴジラなんですよ〜」とカムアウトしだした時は「いくらなんでも調子良すぎるだろ」と呆れたが、嘘偽りなく、ピザーラの由来はゴジラでした。疑ってすいませんでした。 natalie.mu
そのような潮流の中、一社、たった一社だけ、現在大ヒット中の『ゴジラ-1.0』には目もくれず、何故か今頃、かつて隆盛を誇った『平成VSシリーズ』とのコラボレーションを大々的に打ち出す、様子のおかしい会社があった。
今更平成VSシリーズ1984年版『ゴジラ』をタイムラインの起点とした、 『ゴジラvsビオランテ』 『ゴジラvsキングギドラ』 『ゴジラvsモスラ』 『ゴジラvsメカゴジラ』 『ゴジラvsスペースゴジラ』 『ゴジラvsデストロイア』 の6作。以上を俗に「平成VSシリーズ」と呼ぶ。
錚々たる顔ぶれの大怪獣たちが、日本各地のランドマークにて対峙し、ドラゴンボールばりに光線をドカドカ撃ち合う、まさしく"Versus"なシリーズ。 TVヒーロー番組とは桁違いにゴージャスな特撮パートや、超能力、UFO、恐竜といった当時のブームを盛り込んだ物語展開で、多くの90年代キッズ達を夢中にした。キッズの一部は夢中になり過ぎて、特撮を卒業できなくなった。 故・生頼範義氏の手による重厚な怪獣アートに、「世紀末覇王誕生!だれもがこの戦いを待っていた」「破壊神降臨」とアゲアゲな惹句の躍るポスターがまた絶品で、コレに熱くならなかった小学生男子などいない!!!!と断言してもいい。 まさに、国産怪獣映画が年末年始エンターテインメントの目玉であった頃の、古き良き時代を象徴するゴジラシリーズだと言えよう。
そのような、20年以上も昔のシリーズを、最新作『-1.0』に目もくれず推しまくっているマクドナルド。 「ビオランテを倒したあと宇宙へ登っていく沢口靖子の顔」「高性能アンドロイド・M11のスィーッとした走り」「Mobile Operation Godzilla Expert Robot Aero-type」等で未だにキャッキャキャッキャしている、元90年代キッズのアラフォー特撮おじさん達と大差ないマインドだ。
気合入りまくりのCM動画当初の冷え冷えムードを払拭したのは、公式がほどなくして投下した、このCM動画。 youtu.be 「平成VSシリーズといえばコレでしょ!」な名物ファクターを巧妙にフィーチャリングした、企画担当者の「本気」が伺える宣伝動画。 元90年代キッズのゴジラおじさん達は、ベアブリック時の塩対応から一気に手のひらを返し、感激し、「世間は-1.0全盛なのに頭おかしい……」と畏怖した。
突如現れたマクドナルドロボのデザインを手掛けたのは、なんと西川伸司先生。本家じゃん!!!!!!
どこにも無い-1.0要素マックは2022年5月にも『帰ってきたウルトラマン』とコラボレーションしている。 この時も、ベムスターやツインテールではなくゴーストロンを宣材にチョイスする通ぷりが話題になっていたが、コラボメニューの片方を、当時公開中の『シン・ウルトラマン』に割り当てるだけの理性はあった。
だが、今回のコラボに『ゴジラ-1.0』の影はどこにもない。 前項の通り、PVは全編、平成VSシリーズ臭でムンムンな要素だけで構成されている。 3つの限定メニューはどれも『ゴジラ-1.0』の名を冠していない。 敷島がバネ仕掛けで布団から飛び起きたり、震電がコロ走行でゴジラへ特攻するような、ハッピーセットのおもちゃなどもない。
twitterでは連日、「興収50億を突破!」「海外の評価サイトでも高得点!」「アカデミー賞視覚効果部門にノミネート!」とマイゴジ関連のニュースが飛び交っているが、マクドナルドのアカウントは一貫して平成VSシリーズのコラージュ画像を貼り続け、メカゴジラの支援戦闘機・ガルーダと掛けた「デリバリーもアルーダ」なるダジャレを飛ばしている。 いくらゴジラ-1.0の話題を振ろうが、ガンギマった目で平成VSシリーズの話をし続ける友達みたいで、ちょっと怖い。
実際に食べてみた旨辛肉厚ビーフ&ザク切りポテト 肉厚ビーフとハッシュドポテト。 動物性と植物性の二大具材がバンズ上にて対峙する光景は、さながら、G細胞により誕生した植物怪獣がゴジラを襲う平成VSシリーズ1作目『ゴジラvsビオランテ』といったところ。 双方の具材がうまさ、量ともに高いレベルで拮抗しており、思わず黒木特佐のように「勝ったほうが我々の敵になる……!」と口走らずにはいられない。 辛口ソースの味わいや、パティとポテトの堆積による重層的な食感も小気味よく、具材やソースが溢れて食べにくいといった事も無いため、限定バーガー三種の中で最も完成度の高い仕上がりなのも、平成VS最高傑作と目される『ゴジラvsビオランテ』らしい。 ハッシュドポテト絡みの限定メニューがたびたびマクドナルドに登場するように、ビオランテもいつか、最新ゴジラ映画に再登場してくれ……
スモーキーペッパーチキン ビーフと並ぶ昔ながらの定番具材であるチキンが、スモーキーな燻製香に包みこまれることで、新たな美味しさへと生まれ変わる。国会議事堂に張られた繭から、美しく羽化するモスラのように。 添えられたベーコンとの相性も抜群。みなとみらいでゴジラを追い込む、モスラとバトラばりのベストコンビネーションだ。 スライスオニオンも添えられているものの、オニオンがガツンと来るバーガーキングのワッパーに比べると、やはり物足りなさは否めない……!この、やる奴らなんだが、やや非力さを感じさせる面もあるのが、とても『ゴジラvsモスラ』っぽいメニューだと思う。
チーズダブルてりやき 二段重ねへとボリュームアップしたポークパティに甘辛和風ソースがよく絡み合っており、美味しいには違いないのだが、ウリである筈のチーズが甘辛ソースの濃さに埋没気味で、割と只のてりやきバーガーになってしまっている…… しかし、その「只のてりやきバーガー」ぷりが、マクドナルドへあまり行かなくなり、もう10年以上はてりやきを食べていない私の脳領域から、てりやきバーガーの思い出を強く呼び覚ます。
まだメニューもオプションも少なかった90年代、マクドナルドはてりやき一強な風潮が、私の周囲で渦巻いていた。 友達とマックに行き、チキンタツタでも頼もうものなら「てりやき以外を頼むやつダッサww」とネタにされるので、無難にてりやきを頼んでおく。小学生特有のカスみたいな同調圧力だったが、てりやきバーガーが本当に美味かったため、おのずと、マックに来たらてりやきばかりを食べるようになっていった。 成長し、大学受験期へ突入してからも、通学時間や塾の合間を縫ってマックへ通い、友人達とゲームやガンダムやマジック・ザ・ギャザリングの話をしながら食べるてりやきバーガーは、いつだって美味しく、勉強づくめで折れそうな心を、力強く支えてくれた。
チーズダブルてりやきを食べていると、てりやきバーガーとの思い出が、ありありと蘇ってくる…… これは『ゴジラvsキングギドラ』で、迫りくるゴジラを前に、ゴジラザウルスとの思い出を反芻している、新堂会長と全く同じだ。 太平洋戦争中のラゴス島で、米軍の攻撃から救ってくれた友との再会に心震え、ゴジラに貰った命をゴジラに還すかの如く、熱線で焼かれていった新堂会長。その澄み渡った境地の断片を、今回、私も味わうことができた。 『ゴジラvsキングギドラ』劇中、最もエモーショナルな名場面の追体験をさせてくれる、平成VSシリーズコラボレーションメニュー、それが、チーズダブルてりやきの真価だったのである。
おわりに『ゴジラ⧿1.0』のアカデミー視覚効果賞ノミネートに大きく湧いた、2024年初頭のゴジラ界隈。 その裏で平成VSシリーズを擦り続け、別の角度からゴジラを盛り上げていたマクドナルドを、私はこの先も、決して忘れないだろう。