「菩提樹(Der Lindenbaum)/シューベルト」の歌詞対訳と解説【F.Schubert】(ドイツ語/日本語)和訳
「菩提樹(Der Lindenbaum)/シューベルト」の歌詞対訳と解説【F.Schubert】(ドイツ語/日本語)和訳
「菩提樹(Der Lindenbaum)/シューベルト」の歌詞対訳①Am Brunnen vor dem Tore, /市門の先、泉のそばに da steht ein Lindenbaum,/一本の菩提樹が立っている ich träumt’ in seinem Schatten/私はその木蔭で幾たびも、 so manchen süßen Traum./甘い夢をみたものだった。
「菩提樹(Der Lindenbaum)/シューベルト」の歌詞対訳②Ich schnitt in seine Rinde/私はその幹に刻み付けた so manches liebe Wort;/いくつもの愛の言葉を es zog in Freud und Leide/嬉しい時も悲しいときも、 zu ihm mich immer fort./それ(菩提樹)は私を引き付けた。
「菩提樹(Der Lindenbaum)/シューベルト」の歌詞対訳③Ich mußt' auch heute wandern/私は今日、真夜中の旅立ちに vorbei in tiefer Nacht,/その前を通らねばならなかった。 da hab ich noch im Dunkeln/私は暗闇の中だったが、 die Augen zugemacht./眼を閉じた。
「菩提樹(Der Lindenbaum)/シューベルト」の歌詞対訳④Und seine Zweige rauschten,/すると梢(こずえ)がまるで als riefen sie mir zu:/私に呼びかけるようにざわめいた: komm her zu mir,Geselle,/「私のもとにおいで、友よ、 hier findst du deine Ruh./ここにあなたの憩いを見つけることができます。」
「菩提樹(Der Lindenbaum)/シューベルト」の歌詞対訳⑤Die kalten Winde bliesen/冷たい風が、 mir grad ins Angesicht;/正面から顔に吹きつけ der Hut flog mir vom Kopfe,/私の頭から帽子が飛ばされたが、 ich wendete mich nicht./私は振り向かなかった。
「菩提樹(Der Lindenbaum)/シューベルト」の歌詞対訳⑥Nun bin ich manche Stunde/今、私はあの場所から entfernt von jenem Ort,/ずいぶんと離れて(時間的・距離的に)しまったが und immer hör' ich's rauschen:/私はいつもあのざわめきが聞こえる、 du fändest Ruhe dort!/「あなたの憩いはここにあると!」
「菩提樹(Der Lindenbaum)/シューベルト」の解説『冬の旅』については沢山の研究や文献があるのですが、冬の旅についてもっとも核となり押さえておきたい部分は、「冬の旅の主人公は、失恋しており死に向かって旅する(さすらう)」という点です。シューベルトの歌曲で「死」は非常に重要なモチーフと役割を果たしています。聖書の言葉にあるように、「死は若いものにとって苦いが、年老いたものにとっては甘い」ということです。少なくとも、この冬の旅にでてくる主人公は 生きるのに何の迷いも無くて超ハッピー ということはなさそうです。
「魔王/シューベルト」の歌詞対訳と解説【Erlkönig/F.Schubert】「 え?この曲には死とか出て来ないのでは…? 」と思う方もいると思いますが、それについてはシューベルト研究の第一人者である三宅幸夫氏の著書『菩提樹はさざめく』から見ていきましょう。三宅氏によると、この曲における「菩提樹のさざめき(Rauschen)」について以下のように述べています。
憩いは死を表現しているもう少し本に従って解説を進めると、この菩提樹のざわめきの中に出て来る言葉で「憩い」というのは、 「=死の憩い」 のことであり、簡単に述べると 死の魔力・誘惑 のことを指しています。人生がつらい人にとって「死」はとても甘美なものに思えるのですね。
さて、そんなことで少し詩を読み取っていけば、一番最後の段落で「 私はあの場所からずいぶん離れたところにいる⇒しかし、あのときのざわめきがいつも聴こえる 」となっています。これはつまり、あのときからそれだけ時間がたったにも関わらず、今も「死」という誘惑に捉えられている、自殺を考えてしまっている自分がいるということを意味していると考えられるでしょう。
ちなみに曲のタイトルである「Der Lindenbaum(菩提樹)」ですが、この木はドイツでは古くから 愛の象徴 として使われています。シューベルト以降でも、ブラームスやマーラーといったドイツの作曲家が、こぞって愛を回想するときに使っていますね。ちなみにアジア圏での菩提樹は、仏教の教祖であるお釈迦様がこの木の下で悟りを開いたといわれている木なので、とにかく古くから人間と関わりのあった木であることは間違いなさそうです。
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