映画『国宝』立花権五郎の死亡シーンを解説!永瀬正敏が演じた父の生き様とは?
権五郎の背中には不動明王、胸には左右に1匹ずつ巨大な龍が刺青で描かれています。龍には立身出世や成功、強さや勇気などの意味があり、不動明王は「いかなる時も動じない心」を表しているよう。 戦後の長崎で名門一家となった立花組をまとめ上げるため、誰よりも強さを求め、その上で冷静沈着でいようとする頼もしさと決意が彼の彫り物からうかがえます。 息子の喜久雄は背中にミミズクの刺青を彫っていました。映画・小説ともにミミズクは受けた恩を忘れないという話が出てきますが、喜久雄は「恩を忘れない人間」になりたいとミミズクを選んでいます。
喜久雄は自身に流れている立花組の血を恨んでいる!?本作のテーマは「芸」か「血」かというもの。芸道を極めようとする喜久雄は自分に歌舞伎役者の血が流れていないことに苦しみ、その血筋を持つ俊介に「血が欲しい」と訴えていました。 しかし実は喜久雄も任侠一家の坊ちゃんであり、その世界では“血に恵まれている”という立場。この物語は芸道と極道という2つの「道」を極める者たちの物語でもあるのです。
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権五郎が登場するのは映画の序盤。後に喜久雄の師匠となる歌舞伎役者の花井半二郎が、立花組の新年会に顔を出すところから物語が始まります。そこで敵対している組の敵襲に遭い、権五郎は組の者たちを守るために矢面に立ちました。 和やかな新年会から急転、抗争の緊張感と迫力がスクリーンいっぱいに展開。映画冒頭から息をのむ演出となっています。
喜久雄と視聴者の脳裏に焼き付いた死亡シーン この投稿をInstagramで見る権五郎は中庭に1人出ると、ひらりと着物を脱ぎ捨て、背中の和彫りを見せて日本刀をかざし、戦おうとした矢先に銃で撃たれてしまいます。権五郎は出て行く前に、喜久雄に「よく見ておけ」とだけ伝えていました。それは自分の生き様=死に様を目に焼き付けておけという意味だったのでしょうか。 喜久雄の眼には、白い雪が舞う中で戦う父の姿、そこに広がる赤い血が生涯焼き付いていたのかもしれません。
映画『国宝』少年期を演じた子役とは?黒川想矢と越山敬達の演技に賞賛の嵐白い雪が舞う情景は喜久雄が最後に見る景色と類似している!
この投稿をInstagramで見る喜久雄は「ずっと探している風景」を物語の最後に目にします。それは、舞台に舞う紙吹雪が照明を通してキラキラと輝いている様。その様子はまるで、喜久雄が見た父の最期の風景のようでした。 喜久雄が探していたのは、生を全うしようとする死の直前の煌きだったのかもしれません。彼はそれを自身が到達した芸の極み「鷺娘」の舞台後に見ることができたのです。
原作小説での結末は⋯⋯
原作小説での権五郎の最期は映画とは違ったものでした。映画では権五郎を撃ったのが誰かはわかりませんでしたが、小説では彼の弟分である辻村が抗争に紛れて銃弾を撃ち込んでいます。 辻村は立花組の兄弟組織「愛甲会」の若頭で、権五郎は彼を可愛がっていました。その辻村がなぜ権五郎を撃ったのか、それは組織内での権力争いの末だったのかもしれません。もともと辻村は喜久雄の才能を買っていて、花井半二郎を新年会に呼んだのも彼でした。 小説ではさらに、辻村が権五郎亡き後の立花組を仕切って組に貢献していく様子も描かれています。実は歌舞伎役者になった喜久雄を援助し続けており、後に喜久雄に権五郎を殺したのは自分であることを告白した際も、恩を感じていた喜久雄は話を逸らしていました。
冒頭の一瞬で観客を惹きつけた名俳優・永瀬正敏
映画冒頭シーンのみに登場し、強烈な印象を残した立花権五郎を演じたのは、写真家としても活動する俳優の永瀬正敏。 映画『ミステリー・トレイン』(1989年)や「私立探偵 濱マイク」シリーズなどで知られ、2024年には安部公房の小説を原作とした『箱男』で浅野忠信とともに主演を務めました。2025年は劇場版「THE オリバーな犬」や映画『おーい、応為』に出演しています。
永瀬正敏が映画『国宝』に掛ける強い思い この投稿をInstagramで見る権五郎を演じるに当たって、初めてのヒゲ&アイパー姿で挑んだという永瀬正敏。映画公開1カ月後の自身のInstagram投稿には、「最後の(喜久雄の)舞を見るまでずっとずっと心が痛かった、苦しかった」と綴っています。 この文面からはいかに強い思いを懸けて本作に取り組み、喜久雄の父親として生きた時間を大切にしていたかがわかります。
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この記事を書いたライター
洋邦問わずロック音楽とアクション映画をこよなく愛するアラフィフ主婦。漫画とアニメも大好き!専門はアメリカ文学。広島在住、映画館勤務。新作は月5本くらいのペースで観ています。配信サービスはAmazonプライムとdTVを利用中。 以前はホラーとアメコミ以外なら何でも観ていましたが、ここ数年でなぜかどちらも開眼!特に好きなジャンルはアクションとサスペンス。さらに細かいジャンルではクライム、スパイ、カーアクションものが大好物です。SF、戦争映画も好きなジャンル。 好きな監督はクエンティン・タランティーノ。好きな作品は『ナチュラル・ボーン・キラーズ』『イングロリアス・バスターズ』『シン・ゴジラ』。多言語が飛び交うような無国籍作品が好みで、映画からその国の文化も学びたい派。 購読中の漫画は『ONE PIECE』『銀魂』『ゴールデンカムイ』『進撃の巨人』『キングダム』、衝撃を受けたアニメ映画は『幻魔大戦』と大友克洋の『AKIRA』。 ciatrではノンジャンルな感じで、それこそ洋邦問わず映画・ドラマ・アニメなど様々な記事を書いています。得意分野は作品解説と相関図作り。趣味は音楽鑑賞でドラム習得中。絵も描くので、今後もしイラスト作成などあればチャレンジしてみたいと思っています。