Без кейворда
「真田紐」は戦国時代の名将・真田幸村が考案したと言われている。縦横の糸を平たく織り上げたもので、ほとんど伸縮がなく丈夫なため、昔から刀の鞘の下げ紐や帯締めに使われてきた。 千利休は茶道具を入れた木箱に真田紐をかけ、紐の柄で誰の持ち物か一目で分かるようにした。 先代から続く真田紐職人の家に嫁ぎ60年。当時はたくさんいた手織り職人も少しずつやめていき、夫も市会議員になってからは仕事が忙しく、幸さんが一人で製作するようになった。その夫も4月に亡くなった。
簡単なものでも半月帯や着物のように横糸で模様を出すのでなく、縦糸で美しい模様を出す。糸は糸繰りや機にかける前に、長さや形を整える。何百本もの細い絹糸を複雑に重ね合わせ、1日がかりで手動機にセットする。織り上げるには、紐の幅にもよるが、簡単な物でも半月はかかる。 手織りにこだわるのは、絶妙の手加減で強く詰めて織ることができるからで、機械織よりも硬くしっかりとした紐ができる。 「何年たっても腰があり、緩みません。大事に使えばいつまでも使えます」 「手織真田紐」は、滋賀の伝統工芸品として、皇后美智子さまの婚礼の桐箱にかける紐や、正倉院でも利用されたこともある。西村さんの確かな仕事が評価され、紀子さまの滋賀来訪の際、贈った帯締め作りを任された。 「若いころは、一人で夜中までかかって機を織って涙した日もありました。最初は『しょうがない』という気持ちだけで織っていたのですが、年を重ねるごとに『お客さまの喜ぶ顔に感謝したい』との気持ちに変わっていきました。お世話になった人に真田紐でネックレスを作ってあげたらとても喜んでもらえてうれしかった」
伝統文化を残したい現在83歳。後継者がいないことに不安を感じている。伝統文化を残したいと、工房見学などを前向きに受け入れている。大学教授が学生を連れて来たり、日本の伝統を学ぶ外国人が来ることもある。近江商人博物館の展覧会で作品を展示するなど、伝統文化の紹介に力を入れている。 「作品は私の『手のあと』。よそさまの家で大事に使われているとうれしく、紐も喜んでいます。60年、機を織り続け足にはたこができていますが、手足を動かしているのが健康のもと。これからも精魂こめてできる限り長く続けていきたいです」 (取材・鋒山)
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