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吉行淳之介が男女の純愛と性愛を描くラジオドラマ『夕焼けの色』【アーカイブの森 探訪記#63】 | 文化放送

吉行淳之介は、昭和中期から平成初期に活躍した小説家で、 父は詩人・小説家の吉行エイスケ、 母はNHK総合 連続テレビ小説「あぐり」のモデルとなった美容師の吉行あぐり、 妹は先日亡くなられた女優の吉行和子と、 芥川賞作家の吉行理恵という文化人一家で育ち、 作家としては1954年(昭和29年)『驟雨(しゅうう)』で芥川賞を受賞。 その後も『不意の出来事』で新潮社文芸賞、『暗室』で谷崎潤一郎賞、 『夕暮れまで』で野間文芸賞などを受賞。 「第三の新人」と呼ばれる、文学界を牽引した戦後の新人作家たちのひとりである。

映画の公式ホームページでは、吉行淳之介は 「性を主題に精神と肉体の関係を探り、人間性の深淵にせまる作品が多く~」

紹介されている。 映画の内容は 「過去の離婚経験から女性を愛することを恐れる一方、 愛されたい欲望をこじらせる40代小説家の日常を、 エロティシズムとペーソスを織り交ぜながら綴っている」というもので、 吉行淳之介による男女の表現や世界観をどう映画化するのか気になるところだ。

【あらすじ】 「お気に入りの少女を目当てに、毎日、見世物小屋に足を運ぶひとりの青年。 ある日、公演中にその少女が見世物小屋の団長に意地悪をされてしまう。

青年は少女が心配になって楽屋を訪れると、少女から 「自分をイジメてくる団長から逃げ出したいから、一緒に駆け落ちをしよう」 と誘われる。

ふたりは川から蒸気船で小さな町へ向かうが、 時折、意地の悪そうな顔を見せる少女を見て、 青年は少女とうりふたつの、かつて好きだった別の少女を思い出す。

しかし、目の前の駆け落ちをしている少女は押しつけがましく、 かつての少女と違い、青年を不快にさせ、愛しい気分を投げかけてはこなかった。

蒸気船が船着き場にたどり着くと、 少女を連れ戻すために男がひとり待ち構えていた。 そして男は、少女が見世物小屋の団長の若い奥さんで、 夫婦喧嘩のたびに飛び出しては姿を隠すのだと語る。

少女は「男が連れ戻しにこなかったら青年とどうにかなったかもしれない」 と耳元でささやき、そのまま男に連れられて帰っていった。

青年は疲れた様子で小さな池の前のベンチに座り、 池に腹を横にして浮かんだ金魚の死骸を2匹、見つめるのであった。

今はほとんど見なくなった「見世物小屋」、昔はよくあった。 蛇女やろくろ首など珍奇な姿をした人間を見世物にしていた。 見世物小屋より大きいものが木下サーカス。それは今でも全国をまわっているみたいだ。

駆け落ちという言葉も今は死語になったのだろうか。 昭和30年代の通信手段は電話のみ、一旦身を隠せば探すのはほぼ不可能な時代。 今は一人に1台スマホの時代、どこに行っても、身を隠すことはできない。 情報が極めて少ない昔と、情報に溢れた現代と どちらが人類にとって幸せな社会なのだろうか。

本作品のラストシーン、駆け落ちしそこなった青年が下りの船便を待つ間、 駅前のベンチに座る。空を見ると夕焼けが赤く空を染めている。 目の前の池には金魚の死骸が白い腹を上にして浮かんでいる。 それを見た通りすがりの男が、池に浮かぶ死んだ金魚を見て叫ぶ、 「だから金魚はキライだ、とオレが言っているのに」と。

破れた恋と、赤い夕焼け、白い腹を上にする金魚の死骸、それを見て、 「キライだ」と叫ぶ白い衣装の男。吉行淳之介は、何を訴えたかったのだろうか。 タイトルは「夕焼けの色」、空の赤と、汚い池の黒ずんだ色、金魚の赤と白い腹、 破れた恋の色は何色だろうか。赤と白と黒を混ぜた色になるのだろうか。

青年が昔を振り返るシーンでは、 かつて好きだった少女に「君の嫌なところが全部好きだ」と伝えている。 少女の意地の悪さは理不尽な世の中で必死に生きてきたからだと理解しているからだ。 相手の嫌なところ、面倒くさいところ、 可愛げのないところの裏側にある理由をくみ取り、 それを愛おしく思える人間なんてそうはいないだろう。

しかし、見世物小屋の少女と実際に顔を合わせて話してみると、彼女の意地悪さは かつての少女の意地悪さとは違って、愛しさよりも不快感が勝ってしまう。 見た目や表面的な意地の悪さは似ていても、やはり別人であることを実感してしまう。

そこで青年の気持ちは冷めてしまうのかと思いきや、少女が団長の奥さんだと知った時、 青年が内心では少なからず動揺をしている描写がある。 さらに、少女から「邪魔が入らなければ青年とどうにかなったかも」とささやかれた時は ハッキリと動揺を見せている。

その後、青年はひとりベンチに座り、物思いにふける。 「どんな感情でも笑えばいいのに笑えない」と彼は言う。 それは夫婦喧嘩に巻き込まれたバカバカしさへの笑いなのか、 少女との何かを期待して浮かれていた自分への笑いなのか、 いつまでもかつての少女を忘れられない未練がましさへの自嘲なのか、 だが、そのどれも出来なかった。

毎日のように見世物小屋に通い、かつて好きだった少女とうりふたつの少女に 「君の嫌なところが全部好きだ」と言えるような純愛を重ねていたのに、 実際は駆け落ちしてどうにかなりたかったという性愛の感情があったのなら、 それに気づいてしまった彼の胸中は、自分で思っていた以上に つっき~が言っていた「赤と白と黒を混ぜた色」になっていたのかもしれない。

人を純粋に愛せるのも人間なら、下心や性欲を持つのも人間である。 これは自然なことだと思うのだが、心で大事に思うほどに、 自分の中の性愛がより不純に感じてしまうのかもしれない。 この純愛と性愛が入り混じった複雑な感情を「夕焼けの色」と表現していたのであれば、 吉行淳之介の感性や表現力にはただただ感服するのみである。

執筆:アーカイブ探訪隊員 原田 :レジェンド探訪隊員 築島

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