【世にも奇妙な物語 35周年スペシャル~秋の特別編~】『七階闘争』のネタバレと感想
森崎北斗(伊藤淳史)が自宅に戻ると、市役所の職員が扉の前で待っていた。彼は 国の決定により、すべての建物から7階を撤去することになった と説明する。目的は「七階強制撤去法」に基づくもので、6月の殺人事件、8月の強盗事件、10月の放火事件と、国内で発生した一連の重大事件がすべて7階で起きていたことを受けての決定だった。 7階の存在が事件や事故を誘発していると判断 され、全国的に撤去が進められるという。
職員はそのニュースをタブレットで森崎に見せ、 今後は同じ建物内の別の階へ移ってもらう と告げる。転居費用は市が負担し、新しい住まいは10階で見晴らしも良いと説明した。しかし、突然の話に森崎は戸惑いを隠せない。職員は深々と頭を下げ、森崎は「頭を上げてくれ」と言う。職員は7階に強い愛着を持つ住人でなくてよかったと胸をなで下ろす。そして退去届への署名を求める。
森崎は確認のため、「7階がなくなったら、6階の上は8階になるということか」と尋ねる。職員は、 7階を爆破して“だるま落とし式”に撤去する予定 だと答える。森崎は 「呼び名が変わるだけで、実質7階だ」 と指摘するが、職員は「そう感じる人もいるが、国民が安心して暮らせるための決定だ」と淡々と返す。森崎はしばらく考え、 「少し時間をくれ」と保留 を伝える。職員は期日の日に再び訪れると言い残して帰っていった。
7階の歴史出社した森崎は、同僚の並川希(与田祐希)から昨日のお礼だとチョコを渡される。雑談の中で、 並川も同じく7階に住んでいることが判明 する。市役所の職員が訪ねてこなかったかと尋ねる並川は、「話も聞かずに追い返した」と言い、国の決定には賛同できないと不満を漏らす。森崎も「少し強引だとは思う」と同意した。
すると並川は、「今晩時間があるなら」と言って一枚のビラを差し出す。そこには 「七階護持闘争・決起集会」 と書かれており、「徹底抗戦で7階を死守せよ!」と鉢巻姿の人々が声を上げる写真が載っていた。森崎は内容をよく理解できなかったが、 並川に誘われるまま集会に参加 することになる。
リーダーは 「これは戦争だ。運命は2つに1つ、戦い抜くか、死にゆく7階と共に滅ぶかだ」 と宣言。参加者たちは声を上げて盛り上がる。突然、リーダーが森崎を壇上に呼び上げ、「今日から一緒に戦う新しい仲間だ」と紹介した。森崎は思わず「は?」と声を漏らすが、会場の勢いに押され、正拳突きを繰り返す“七階の動き”をやらされる。リーダーから鉢巻を手渡され、周囲の熱気に飲まれながらも、 森崎は次第にその場の一体感に馴染んでいった 。
刷り込み課長はさらに並川を挑発し始めた。森崎は思わず口を開き、「何でも7階のせいにするのは短絡的すぎるんじゃないですか」と助け舟を出す。課長は今度は森崎に矛先を向け、「そんなに7階が大事なのか?」と詰め寄る。森崎は 「7階じゃないと生きられない人もいるんじゃないですか」 と反論したところで、電話のベルが鳴り、緊張は途切れた。
しばらくして、並川が机に1枚のメモを置いていった。「森崎さん、かっこよかったです」と書かれており、森崎は照れながらも嬉しそうに微笑む。だが、メモの裏を見て息をのむ。 「今夜、7階の刷り込みを決行します」 と書かれていたのだ。顔を上げると、並川は静かに頷いた。
その夜、森崎は並川たちとともに行動を共にする。彼らは未完成のマンションに潜入し、 表札の“101”を“701”に張り替えていく 。リーダーが説明する。「まだ完成していないマンションは、自分が何階なのかを認識していない。だから今のうちに “自分は七階だ”と刷り込ませるんだ 」。刷り込みとは雛鳥が親を覚える現象のことだという。森崎は思わず 「未完成のマンションに自我なんてあるのか」 と呟くが、並川は「やっていればわかります」と真剣な表情で答えた。
崩壊しかし、 リーダーが警察に逮捕される 。現場に駆けつけた森崎に向けて、リーダーは何度も「7!」と叫んだ。だが 森崎は何も答えず、静かに鉢巻を外した 。他の仲間たちも沈黙したままだった。少し遅れて駆けつけた並川に、市民たちが状況を説明する。ネット上では「7階市民たちは転居費用を釣り上げるために抵抗している」との噂が広まり、彼らの自宅や勤務先は特定されて晒されていた。さらに、刷り込みの最中に撮られた監視カメラ映像まで拡散していた。
それ以降、 7階市民の集会は開かれなくなり、並川とも連絡が途絶えた 。森崎が自宅の7階に戻ると、壁や扉には罵詈雑言の落書きが残されていた。退去期日もだいぶ過ぎた頃、市役所の職員が再び訪れる。森崎以外の住民はすでに退去していたという。引っ越しの希望者が殺到しており、以前に話していた部屋を確保できなくなるかもしれないと告げられ、職員が見せたのは古びた一軒家の写真だった。「今日決断してくれれば、前に言っていた部屋を用意できる」と言われ、 森崎はついに転居を決意する。
荷造りの最中、玄関のチャイムが鳴った。 ドアを開けると並川が立っていた 。「一人じゃ飲みきれなくて」と言いながら、ワインの瓶を手にしていた。
7階に殉ず強制執行の日が決まり、森崎と並川は7階の階段に座り、ワインを飲んでいた。並川は静かにグラスを傾けながら、 「私は7階と運命を共にします」 と告げる。森崎は「そんなことはだめだ」と必死に止めるが、並川は悲しげに微笑んで、「やっぱり森崎さんは、本気で7階のことを思っていたわけじゃなかったんですね」とつぶやいた。
森崎は「他の場所に移れば、こんなに傷つくことはない」と説得を試みる。だが並川は、「何もない場所でも、誰かにとってはかけがえのない場所ってこともあるじゃないですか」と穏やかに答える。その言葉に胸を突かれ、森崎は思わず彼女を強く抱きしめ、 「生きてくれよ! 一緒に」と叫んだ 。並川はその腕の中で目を閉じ、「とても嬉しいです。森崎さんとだったら、どこまでも一緒にいけます。同士として」と優しく答えた。森崎はその言葉に戸惑い、ゆっくりと腕をほどいた。
並川は静かに言葉を続ける。「私は生まれたときから7階で、どこへ引っ越しても7階だった。 7階は私にとって大切な家族なんです。 だから森崎さんと、最後の時を7階で生きたい」。森崎は強く首を振り、「違う、並川さんと一緒に生きていきたい。最後じゃなくて、これからもこの先も」と訴えた。
『七階闘争』の結末
森崎は10階に引っ越した 。エレベーターのボタンには、もはや「7」の数字がなかった。 職場に行くと、並川の姿はなかった 。課長は彼女の辞表受け取っていて、「7階撤去の日から連絡が取れない」という。「なんか“7階に殉ずる”とか言ってたみたいだし、やっぱ7階市民ってヤバいよね」と笑う課長に、森崎は何も言わなかった。
課長は新聞を広げ、「7階での犯罪が激減した」と得意げに見せた。だが森崎は紙面を見て憤りを隠せなかった。「6月以前の記録がまったくない。こんなの、7階撤去をスムーズに進めるための作られた数字でしかない!」と声を荒げる。課長は「7階なんてただの数字だろ」と言い捨てた。森崎は冷静に言い返す。「もしも“全国の課長の犯罪率が高い”っていうデータが出たらどうします? 次に標的になるのは、課長かもしれませんよ 」と言い残し、席に戻った。
それから3か月。7階撤去後、国内では連続強盗事件が多発し、他の階層でのトラブルが目立ち始めた。ラジオのコメンテーターは、「7階があったおかげというか、あの階が犯罪の抑止力になっていたのでは」と語る。森崎が食事をしている部屋の窓の外には、遠くに黒煙が上がっていた。ネットニュースには、「7階市民行方不明」 「死にゆく7階と運命を共に、集団自決か?」 という見出しが踊る。
森崎が部屋に戻ろうとした瞬間、爆発音が響いた。続いて銃声、ガラスの割れる音が連続して鳴り、街全体が混乱に包まれていく。テレビをつけるとニュース速報が流れた。 昨夜死亡した“七階護持闘争”のリーダーの素性が判明した という。宇賀市内に住む48歳の男性だった。「七階撤去法施行から77日、市民の声を聞くと、“犯罪率がゼロなら7階に住みたい”“ やっぱり7階はあったほうがいい ”といった意見も出ています」とキャスターの声が続く。
そして建設中のマンションにたどり着き、 ひとりで“刷り込み”を始める 。表札を張り替えながら、指先に力を込めた。やがて「よかった。森崎さんだったら、分かってくれると思ってました」という並川の声が聞こえた。