ロックは淑女の嗜みでして:第2話『交わりましょう♡/絶対、認めない!』感想ツイートまとめ
生粋のお嬢様である音羽はナチュラルに生きてて、ドラム叩くのもただただやりたいから、家という檻にぶつかって反発することも(少なくとも表面上は)なく、自然とハイソに生きていられる。 しかし庶民から運命に押し流され上流階級に流れ着いたりりさは、前父の思い出なんかにも引きずられつつ、母を守るために”頑張って”淑女をやり、ギターを忘れようとしている。 急な再婚で色々軋轢が生まれているのは、義妹ちゃんのツンツンした態度からも透けて見えるが、自分を包囲する新しい世界に反発することで、りりさはなんとか自分を譲らず、望みを諦めずに生き延びようとしている。
つまりりりさにとって、ロックも淑女もナチュラルにやれてる(ように見える)音羽は、なりたい自分の理想だからこそ反発する、鏡写しの夢である。 そらー夢中にもなるし素直に受け入れられないわ…ってんで、大変美味しい反発と誘引が、ゆらゆら同居する展開となる。 音羽との関係はロックと淑女という、作品の中心軸をそのまま反射もしているので、キャラクターとドラマの核にしっかり入り込んでいて、獲得されるトルクも強い。 白いのが黒いののアプローチにワーワー騒ぎ、「諦めるために弾く!」とかいう自己矛盾に気づかぬまま、交わりにツッコんでいく姿は、りりさの葛藤を上手く照らすわけだ。
本当は弾きたい(弾くことで、失われた父を取り戻したい)けど、お嬢様であるために弾けない(弾かないことで、今隣りにいる母と家を守りたい)。 ロックであることと淑女であることは、りりさの中では矛盾し、音羽の中では共存している。 エロティックで野放図でありながら、完璧なお嬢様の外装を自然と整えれてしまう音羽の無理のなさに、りりさは憧れつつも反発し、だからこそ引き寄せられていく。
というわけで元・庶民が無邪気な天使たちの対応に顔面ピキらせる中、生粋のお嬢様は人前で超グイグイ来て、色々無理してる女を更にかき回していく。 演技と天然、無理と素直。 正反対な二人だからこそ衝突と対流が生まれ、それを”ロック”が繋ぎ混ぜ合わせていく構図だが、セッションに至るまでの道は結構長くて、りりさがどこに身を置いているのかを丁寧に描く。
やっぱ物語の軸足は”ロック”にあって、”淑女”の方はロックンロールが古式ゆかしい抵抗音楽であるために必要な、抑圧を生み出す機構として扱われている感じがある。 なので”淑女”の内実を知るために必要な鍛錬は既に終わっていて、りりさは完璧な外面を取り繕い、見知らぬ水槽を上手く泳ぐ力を付けている。 その偽装が引っ剥がされるのは、ワケ分かんねー完璧お嬢様がグイグイ来たときだけであり、音羽だけがりりさの素顔を知っている。 ここら辺のロマンティックの作り方は大変巧みで、主役コンビを上手く立てているなぁという印象だ。
りりさが遠く見上げるノーブルメイデンという星は、「ならなくちゃいけない」であって「なりたい」ではない。 母や家はりりさのアイデンティティに深く根づき、愛すればこそ守らなければいけない対象ではあるのだけど、彼女自身ではない。 彼女の心は幼い時、父に連れられてギターを握った時代に縛り付けられていて、勝手にそこから引きずり出されたからこそ、諦めれず燃えきれず、ロックに未練を残してもいる。 未成熟で未解決な思春期を、思うまま他人に叩きつけるより自分の中に抱え込んで、優しく誰かを守るために自分を偽る。 りりさが想像以上に”いい子”なのが、嬉しくもあり淋しくもあり…である。
そういう奴にこそロックは必要なはずで、婚姻と身分、二重の差別制度でギッチギチに縛られた”良家の子女”つう立場が、現代社会に残る数少ない檻として機能する…つう構図なのだろう。 これに反発するロックンロールの爆発力を、どういう説得力で描いていくかが今後大事になりそうだけど、演奏シーンの仕上がりでそこは現状確保できてる印象。 とにかく下層階級の憤怒を宿して、口汚く勢いよく荒くれていればロックだった原始時代の気配を取り戻す感じで、言動が治安悪いのがどう響いてくるか、だなぁ…。 一口に”ロック”言いましても、時代の変遷に揉まれてまぁ、色々ございますからな…。
まぁそこら辺の変遷をあえて無視して、極めて源ロック的な下層からの荒くれた突き上げ、性と暴力と悦楽に溺れる反社会性みたいのを、作品を牽引する原動力として選んだお話ではあろう。 男性原理で駆動するそういう音楽を、そのまんま”淑女”が背負うと別種の濁りも出てきそうだが、キャラの濃さと良さでそこら辺あんま気にさせない運びにするか、開き直ってペニス羨望満載の「女の形をした男」にするか。 …多分作品味わう上ではあんま大事じゃない要素に、既に引っかかってる気配が自分の中であるな。 フィーメールであることの難しさと意義まで、多分踏み込む造りじゃないぞコレ。
そこら辺は先の話として、今は紅薔薇と白百合、放課後の邂逅である。 一人黙々とスティックを握る音羽の隣に、未来を予言するように赤と白の花が並び立っている姿が、大変印象的だ。 自分の「やりたい」を否定するならこんな場所こなければいいのに、色々屁理屈つけてセッションの現場まで足を運ぶ時点で、りりさの気持ちは決まっている。 しかしその本心を…滾る思いが導くバンドへの道を、素直に受け止められないからこそ、優等生は辛い。 鎖を引きちぎり、真実の自分になれる期待感が、ツンツンした態度の奥にあったればこそ、少女はギターを再び握る。
決戦前夜の明暗は、音羽が悩みなく突きつける衝動主義こそが光であることを語る。 色々優しく周りのことを考えて、あるべき自分を優先しようとするりりさは影に立ち、「やりたい」に素直な音羽は光を背負う。 そらーロックのお話なんだから、ロックをやるのが”正解”なわけだが。 慣れないお嬢様生活の中、自分だけじゃなく自分の大事な人も守るべく色々背負おうとしているりりさの無理は、果たして影に塗りつぶされるだけのモノなのか。 りりさから音羽への影響力が、このセッションのあとにどう響いてくるかが大事かなー、と思った。 音羽の圧倒的な引力に、振り回されている姿も可愛いんだけどね…。
音羽は常に赤い薔薇を己のアトリビュートにしてて、しかしそれは前回砕け壊れた。 ずーっと一人でドラム叩いている孤独が強調された果て、思わぬ乱入者によって生まれた初めてのセッションに、花弁は濡れそぼち、白百合を隣に置く。 それは生粋のお嬢様として、絶対無敵で誰にも影響されない…ように見える音羽が、散々文句言いつつもロックと音羽のことばっかり考えてるりりさと同じく、運命の出会いに揺さぶられた証明に思えた。 一人でいいのだと思い込んでいた女の子が、一緒にいたいと、弾きたいと思える誰かに出会えたのなら、それは幸せなことだ。 ここら辺見えにくいミステリアスが、音羽の魅力でもあるので面白い。
明らかにりりさのことが大好きだし、お嬢様モードでは素直にそれを表に出してもいるのに、地金をむき出しにされる演奏とその後では、侮蔑にしかならない治安最悪言語で愛を語ってしまう。 音羽もまー難儀な女だな…って感じだが、あの荒くれた独りよがりが一種の甘えであり、傷つけて(いる自覚も、音羽には無いかもしれないけど)なお隣に立ってくれると、信じればこそ思いを全部、叩きつけている感じはする。 それはつまり溢れかえる純情であり、突っ張って一輪で咲きつつも誰か隣にいて欲しいと願う孤独であり、若者がロックを必要とする理由の全てであろう。 それが垣間見える、ラストの頑是ない笑顔であった。
生粋のお嬢様力でりりさを振り回し、翻弄しつつも自分の腹は見せきらない音羽が、間違いなくりりさのこと好きだと解るのは、大変ありがたい。 それを世間一般で通用する…それこそノーブルメイデンに表彰されるような、分かりやすい形に整えることに価値を見出していないのに、完璧な偽装でお嬢様世界渡れてしまっているところに、音羽の作り上げた殻の硬さ、生まれる軋み、ロックを求める気持ちが見える…気がする。 視聴者が自然と、底知れぬキャラクター性の奥を見たくなる牽引力が音羽にあることで、反発しつつ彼女を追ってしまうりりさとシンクロしていくのは、大変いい話運びだった。
「辞めるために、全力で弾く!」とかいう、自己矛盾の塊になってる事実にりりさが全く気づいていない、この状況。 どう考えても魂入ったセッションで、ロックンロールを演るしかない自分を理解らされてバンド結成であろうが、そっからどこへ飛び立っていくのか。 母も素顔の自分を受け止めてくれない檻の中、たった一人本音を叩きつけ合って壊れない関係を、ロックンロールは鍛造ってくれるのか。 次回のセッションは熱くなりそうで、とても楽しみです。