2の平方根
√2が無理数であることの発見は、古代ギリシャのピタゴラス教団に属していたとされるヒッパソスによると言われています。彼は√2を分数で表そうとする中で、それが不可能であること、すなわち無理数であることを(おそらく幾何学的に)証明したとされています。しかし、数の絶対的な調和を信じていたピタゴラスとその教団は、無理数の存在を認めようとしませんでした。彼らは無理数を「アロゴン(口にできないもの)」と呼び、その秘密を守ろうとしましたが、ヒッパソスは無理数の存在を公表したために追放され、あるいは溺死させられたという伝説が残っています。このエピソードは、無理数の発見がいかに衝撃的であったかを示しています。
無理数であることの証明√2が無理数であることの証明には、いくつかの方法があります。最も古典的でよく知られているのは背理法を用いた証明です。
√2が有理数であると仮定すると、互いに素な二つの整数 m, n を用いて `√2 = m/n` と表すことができます。両辺を2乗すると `2 = m²/n²` となり、`m² = 2n²` が得られます。この式は m² が偶数であることを示しており、したがって m 自身も偶数であることが導かれます。そこで m = 2k (kは整数)とおいて元の式に代入すると、`(2k)² = 2n²` から `4k² = 2n²`、さらに `2k² = n²` となります。これは n² が偶数であることを示しており、したがって n 自身も偶数であることが導かれます。結局、mもnも偶数ということになりますが、これは最初にmとnを互いに素であると仮定したことに矛盾します。この矛盾は最初の仮定(√2が有理数である)が誤りであったことを意味するため、√2は無理数であると結論付けられます。
日常生活における2の平方根最も有名なのは、国際標準化機構(ISO 216)で定められた用紙サイズ(A列やB列)です。A4やA3といった用紙は、長辺と短辺の比がほぼ `1 : √2` となっています。この比率の利点は、用紙を長辺の中央で半分に折ると、元の紙と相似な、面積が半分の新しいサイズの用紙が得られることです。例えば、A3を半分に折るとA4になり、A4を半分に折るとA5になります。この性質により、規格サイズの用紙から効率的に小さいサイズの用紙を作成できます。
この `1 : √2` の比率を持つ長方形は白銀長方形(ルート長方形)と呼ばれます。用紙サイズ以外にも、日本の建築モジュールの考え方や、大工さんが使う指矩(さしがね)の裏面に刻まれた「角目」と呼ばれる特殊な目盛にも√2の比率が応用されており、丸太から最大の正方形の角材を切り出す際の寸法決めに使われることがあります。