合唱に役立つ(かもしれない)言語学の話(2):合唱における「鼻濁音信仰」に物申す
ところが、バ行音を含む濁音がかつて鼻音性の発音であったとすると、このような振る舞いにも自然な説明が与えられます。仮にバ行音が鼻音を伴っていたとすると、先述したように「 ン バ・ ン ビ・ ン ブ・ ン ベ・ ン ボ」のように発音されます。この発音、ぜひ実際にやってみてください。――ほとんどマ行音に聞えませんか?実はバ行音が鼻音性を伴うと、マ行音に非常に近い発音になるのです。違いは、せいぜい両唇による呼気の強い閉鎖があるかないか、くらいです。これだけ発音が近いと、しばしばこれらの発音の区別が曖昧になるのも納得できます。
2. 「鼻濁音」で歌う理由を考えるまず、「鼻濁音が伝統的で正しい日本語の発音だから」という点についてはどうでしょうか。確かに、NHKのアナウンサーは必ずガ行鼻濁音で発音するようトレーニングを受けるようですし、ちょっと前まではガ行鼻濁音が一般的な東京方言の発音であったことは事実でしょう。しかし、そもそもここでの「伝統的」とか「正しい」という判断はどこからくるのでしょうか?「伝統的」という意味でいえば、ザ行やダ行を含むすべての濁音を鼻濁音で発音するというのが、知りうる限りもっとも「伝統的」な日本語の発音ということになります。したがって、「伝統的」であることを重んじるのであれば、すべての濁音を鼻音性の発音で――例えばバ行であれば「 ン バ・ ン ビ・ ン ブ・ ン ベ・ ン ボ」のように――発音しなければなりません。ガ行だけを鼻濁音で発音する必然性は、「伝統的」な観点からすればあまりないのです。「正しい」という判断も、非常に曖昧なものです。「正しい」を「伝統的」と同じような根拠に基づいて判断しているのであれば、今見てきたような問題に逢着します。また、「多くの日本語話者がそのような発音をしている」という根拠に基づいているのであれば、こちらも実態として鼻濁音が衰退に向かっていることを踏まえると、実に頼りない根拠ということになります。
3. 合唱で「鼻濁音」はどう扱うべき?- 歌というものは数世代くらい前の規範意識が反映されるものだから、それに従って現代の歌は鼻濁音で発音する。
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