コマツ、2025年度第1回ウェブ社長インタビューを公開
城向あかりさん(以下、城向):お届けしています「コマツ社長インタビュー」、2025年4月1日、コマツの代表取締役社長兼CEOに今吉琢也さんが就任しました。また、4月28日の決算発表に合わせて、2025年度から新たな3カ年の中期経営計画「Driving value with ambition (ドライビングバリュー・ウィズ・アンビション)価値創造への挑戦」を発表しました。今回は、現在の事業環境と新中期経営計画について、今吉新社長にお話を伺ってまいります。今吉社長、よろしくお願いいたします。
今吉社長(以下、今吉):よろしくお願いします。
城向:では初めに、4月28日に発表しました2024年度の業績について、こちらをご覧ください。 2024年度の連結売上高は、前年比プラス6.2%増収の4兆1,044億円、営業利益はプラス8.2%増益の6,571億円となりました。売上高及び営業利益は、為替差のプラス影響、販売価格の改善などにより、増収増益となりました。純利益はプラス11.7%増益の4,396億円となりました。売上高、営業利益と利益率、純利益は、いずれも過去最高となりました。 続いて、今期2025年度の業績見通しについて、こちらをご覧ください。2025年度の連結売上高は、為替の想定を1ドル135円と設定し、前年比マイナス8.8%減収の3兆7,450億円、営業利益は前年比マイナス27.3%減益の4,780億円を見込んでいます。純利益は前年比マイナス29.7%減益の3,090億円となる見通しです。
■影響を及ぼすアメリカの関税政策 では、ここから今吉社長にお話を伺ってまいります。 就任1年目のスタートは、アメリカの関税政策などの影響もありまして大変厳しい船出となっていると思うんですけれども、まず足元の状況と今後の見通しについて教えてください。
今吉:はい、終わりました24年度はですね、これまでの成長戦略であったり構造改革の効果が出てきたと思います。販売価格の改善であったり、為替の円安影響も大きく、前年比で増収増益、売上げ、利益については3年連続で過去最高を更新することができました。ただし、売上げの数量としては前年比でマイナスということで、需要環境としては厳しい年だったと思ってます。 それから、25年度については発表の通りですが、建機需要は若干のマイナスを見込んでいることに加えて、円高及び米国の関税政策の影響によるコスト増、需要減によって減収減益の見通しを発表しています。 建設・鉱山機械の需要は、中長期的には新興国を中心に人口増であったりインフラ更新などもあって緩やかに成長すると考えておりますけれども、周期的には変動する業界で、現在は若干の調整局面にあるかなと思っています。
城向:今のお話にもありましたが、2025年度の業績予想の大きな要因としてアメリカの関税政策の影響が挙げられると思うんですけれども、そこを具体的に教えていただけますか。
今吉:はい、4月28日の公表時点での影響額になります。その時はですね、その時点での米国政府での発表済みの関税政策に基づく税率を計算して入れております。 全体としては影響額943億円のマイナスということですけども、内訳としては物量減で158億円。それから、名目のGDPが約グローバルで20.1%下がるだろうという予測を使ってですね、建機需要については相関関数から2.7%のマイナスということを全世界的に織り込んで影響額を算出しています。 それから、関税コストの増加については合計で785億円ということですけども、先ほどの通り、その時点で既に発表されていた関税額を織り込んでいます。年間影響としては実は1,400億円の影響なんですけども、在庫を考慮すると先ほどの数字ということになります。
城向:そのような中ですね、今回、業績見通しに年間影響額を織り込まれていますけれども、それはどういったお考えからでしょうか。
今吉:そうですね、まずコマツはIRに一生懸命取り組んでおりますけども、その時点でわかる範囲でできるだけ正確、丁寧に説明をするということを従来からやっておりますけども、今回についても、先ほどの通り、わかる範囲で数字を全て織り込んで発表したということです。その後もですね。実際、ご承知の通り、米中の関税率等はいろんな交渉で動いておりますけれども、今後、会社としても新しい情報に基づいて業績の修正については発表していきたいと思っております。
城向:日々大変状況が変わりますので予測が難しいだろうなと思うんですが、その都度状況を説明していくということですね。
今吉:はい。
城向:コマツはアメリカでも生産工場がありますけれども、アメリカにおける事業構造をもう少し詳しく教えてください。
今吉:はい。建設機械・車両の生産拠点としては全部で13か所ございます。現在、米国の販売のうちですね、約50%が米国内の生産、残り50%が海外からの輸入という構造になってるかと思います。主に一般建機の完成品と部品でですね、日本、タイ、ブラジル等からになります。あと、鉱山機械についてはですね、米国での生産が多く、そこから世界各国への輸出という構造になっています。
城向:そのような事業構造を受けまして、関税の影響への対応としてどのようなことに取り組んでらっしゃるんでしょうか。
今吉:すぐできる短期的な対策としてはですね。例えば、カナダ向けの車両については米国を通さずに直送するというような対応をすでに取り始めていますし、あと、鉄鋼、アルミの関税の問題がありますけれども、それについては、その含有量等を正確に計算をしてなるべく関税額を抑える、そういうことは既に取り組んでいます。 あと、若干時間かかりますけれども、中期的には、例えばカナダ向け、中南米向けの補給部品の輸出がアメリカからあるんですけども、それについては海外からの直送化を検討するですとか、あとはいろんな形でですね、すでに作ってるクロスソーシングの体制を活用しながら関税額を抑えていく活動を今検討、取り組み中です。
城向:それぞれ短期とか中期とか対応策を考えられているわけですね。ちなみに、値上げやアメリカ生産を増やすというお考えはいかがでしょうか。
今吉:値上げについては業績予想の中にも入れておりますけども、事業計画に織り込んでいる値上げでは関税額のアップはカバーできませんので、今後関税に対応した形で、サーチャージ(付加料金)のような形での値上げを検討していくことになりますけれども、今後とも、やっぱり関税の動向であったり、競合メーカーの動向もよく見ながら検討していきたいと思っています。 需要のあるところで生産をするということを考えておりますので、すでに実際アメリカで5割は現地生産をしてるわけですけども、コストをよく検討しながらベストの生産体制を検討していきたいと思っています。
城向:はい。このような激動の環境下での社長就任となりましたけれども、今後、経営の舵取りというのはどのように考えていらっしゃいますか。
今吉:そうですね、今グローバルに非常に不透明な状況が起きていますし、自由貿易を前提にグローバルなオペレーションを作ってきたコマツのような企業にとっては非常にチャレンジングな時期かと思います。そういう中でもですね、やはりリスク管理をしっかりしながらベストのシナリオを作るべく、さらに、会社としてのレジリエンスを強化したいと思っています。 その中ではですね、全体の環境としては、やっぱり脱炭素社会への移行であったり、自動化、遠隔化の技術の進展等ありますので、DX、AIも含めてですね、積極的に取り組んでいきたいと思いますし、会社としては、従来通り品質と信頼性という考え方をしっかり維持しながらですね、対応していきたいと思っています。 それによってですね、お客様に引き続きベストの製品、サービス、ソリューションを提供していければと思っています。
城向:今お話いただいた戦略としては中期経営計画が位置づけられると思うんですけれども、次は、策定を担当されました新中期経営計画について伺います。新中期経営計画のタイトルをドライビングバリュー・ウィズ・アンビション、価値創造への挑戦とされていますけれども、この意味合いについてお聞かせください。
今吉:はい。コマツはですね、4年前の100周年を機に、存在意義、価値観、それからブランドプロミスっていうのを社内で議論の上言語化したと申しておりますけども、グループの社員の中で、ステークホルダーの中で大事にしてきた考え方をこう整理をしました。その中でですね、特に存在意義、価値観というのはこれから社内的にも定着をさせなければいけないわけですけども、先般改定しました「コマツウェイ」の中にも織り込みましたし、この新中計の中にもですね、ぜひ織り込みたいということで考えました。
城向:その中で、やはり価値観としてですね、このアンビションですね。
今吉:はい。日本語で言うと「挑戦する」ということなんですけども、今回の中計を作るにあたって、いろんな事業環境も踏まえてですね、やはり挑戦するということが1番適切かなということで、タイトルの方にも入れた次第です。お客様をはじめとしたステークホルダーの皆様と共に新たな価値を創造するということを申しておりますけども、グループ社員1人1人がですね、そのような、その挑戦する意識のもとに取り組んでもらえれば非常にいいことかなとも思っております。
城向:はい。「挑戦」への意気込み、感じられますね。では次に、新しい中期経営計画では、ありたい姿を安全で生産性の高いクリーンな現場を実現するソリューションパートナーと再定義されましたけれども、このありたい姿に込めた思いをお聞かせください。
今吉:はい。そうですね。前中計では、ありたい姿を安全、生産性の高い、スマートでクリーンな未来の現場をお客様と共に創るということを言ってきましたけども、実際そのように我々が考えた未来の現場がすでに一部実現しつつあるという風に考えておりますし、今後はそれをどう発展させていくか、広げていくかということが非常に重要だと思いました。一方、コマツの立ち位置としてはですね、今回新たにソリューションパートナーとして、お客様とともにその価値を創り上げる存在としてソリューションパートナーという言葉を選んで、ありたい姿として定めています。
城向:本中期経営計画では、成長戦略としてイノベーションによる価値競争、成長性と収益性の追求、経営基盤の革新を3本柱と定めていますけれども、どのような点に力を入れていきたいとお考えでしょうか。
今吉:そうですね、イノベーションによる価値競争においては、やはり電動化対応であったり自動化、遠隔化、新しい技術に対応した商品の開発ってのを、非常に重要になりますし、引き続き、そのスマコン、オートマスをはじめとしたですね、ソリューションのところの強化とスピードアップを積極的に取り組む必要があると思っています。 あと、成長性と収益性の追求ということで言いますと、やはり今後の成長市場として、中近東、アフリカ、当然インド、アジアもまだまだ伸びますので、そういうところでのプレゼンス向上ということで取り組んでいきますし、今まで伝統市場、戦略市場っていう言い方をしてきましたけど、もう少し細かくですね、各地域ごとの競争軸を見極めながら積極的かつ適切な投資、取り組みをしていきたいと思っております。 あと、最後の経営基盤の革新ということではですね、やはりレジリエンスという言葉が重要だと思いますけども、いろんなリスク管理も含めて経営の基盤の強化をしていかなければいけませんし、ただ、まずは何よりもやはり人材の活用のところがですね、非常に重要だと思いますので、そこも引き続き取り組んでいきたいと思います。その中でですね、やはりDX、AIっていう、流行り言葉になりますけども、その取り組みもしっかり取り入れていきたいと思っています。
城向:では、続いて経営目標について伺います。成長性、収益性では引き続き数値目標を掲げていませんけれども、こちらの考え方を教えてください。また、今回の変更点についても合わせて教えてください。
今吉:経営目標の中で、成長性と収益性についてはですね、やはり我々の業界の需要変動が極めて大きいということでですね、今回についても他社との相対目標ということにしています。 ただ一方で、周期性の中で、キャッシュフローについては、今までもですけども、投資家さんの視点もありますし、会社としても取り組んできたところですので、今回は新たに数値目標というのを設定しました。フリーキャッシュフローを、M&Aを除くことになりますけども、3年累計で1兆円という数字を置いております。 それから、変更という意味ではですね、リテールファイナンス事業についてはデットエクイティレシオを5倍ということにしておりましたけども、ややコンサバすぎるということもありますし、実際リスク管理ができておりますし、引き続き重要なマーケティングツールと見ておりますので、今回6倍というふうに少し変更しております。 あとはですね、目標の区分をですね、財務、非財務という今回はっきり分けた上で、非財務のところは社会課題解決ということで設定をしております。いろんなKPIを置いておりますけども、9月の発行予定ですけども、コマツレポートの中で具体的なKPIについては開示をしていきたいと思いますし、成長戦略を通じた社会課題解決という基本的な考え方はこれまで通りやっていきたいと思っております。
城向:では、最後に、ステークホルダーの皆様へのメッセージをお願いいたします。
今吉:はい。コマツの場合、企業活動は社会を含む全てのステークホルダーからの信頼度の総和ということを申し上げておりますけども、今後もですね、全てのステークホルダー様に向けて丁寧な情報開示と、それから対話を続けていきたいと思います。全般的に経営環境としては先ほどの通りですけども、企業価値の向上に向けてですね、価値創造に挑戦をしていきたいと思います。
城向:はい。本日はどうもありがとうございました。
今吉:ありがとうございました。
関連No related posts.
キーワード検索(例えば、「関税」) 機械ニュース 新工場ニュース 人気記事(24~48時間)- マキタ、パナソニックのパワーツール事業を取得、工場向け締付・IoT分野に本格参入
- 東亜建設工業、東ティモールで国際空港整備を受注、ODA無償資金で約64億円・工期28ヶ月
- 建設機械出荷、2026年2月は9.6%増の3,074億円、4カ月連続の増加
- IHIインフラシステム、4月に商号変更、事業統合を機に「IHIインフラスクエア」へ
- ヤンマー建機、夜間作業性を高めた小型油圧ショベル「B20U-A/B60U-A」発売、作業灯増設で照射範囲拡大
- 古河機械金属、川崎重工からアーステクニカ全株式を取得へ
- 自律ショベルと自律クローラダンプが協調作業を実現、住友重機械・住友建機・フジタが実証試験に成功
- カヤバ、油状態の常時監視で予防保全を高度化、「油状態診断システム」をサービス化
- 酒井重工業、事業企画部新設とAI推進体制を強化、次世代事業開発部は廃止
- 前田製作所、三重県でコマツ製品事業を拡大、販売・サービス・レンタルを一体展開
- ■「kikai-news.net」について
- ■お知らせ一覧
- ■プライバシーポリシー
- ■特定商取引法に基づく表記
- ■お問い合わせ
- ■2025年(年間)の人気記事(決算、年頭所感、毎月統計除く)
- 世界の建設機械トップ50「Yellow Table 2025」、堅調維持・市場縮小傾向も中国勢が存在感を拡大
- コマツの小川社長、トランプ政権で最も危惧されるのは関税、年末会見より
- 【補足】ナブテスコ、油圧機器事業をイタリア企業に譲渡、技術継承とグローバル再編、欧州との融合で再出発
- タダノ、IHI運搬機械の運搬システム事業を買収
- 日本の油圧機器メーカー、世界市場で存在感を示すも競争激化:再編と次世代技術への挑戦
- 米キャタピラー、創立100周年を記念してCat®限定版マシンを提供
- コマツドイツ、PC9000で油圧式鉱山ショベルのポートフォリオを拡張
- 神戸製鋼、24年度の建設機械(コベルコ建機)売上は4.0%減の3,880億円、25年度予想は3.1%増の4,000億円
- オークマ、約140 億円投じて江南工場(愛知県江南市)に2棟建設
- 古河機械金属と川崎重工、アーステクニカの株式譲渡検討、破砕機事業の拡充・発展を目的に基本合意
- 建設機械、2026年度出荷は横ばいの2兆8,457億円と予測、建機工が需要見通し発表
- 米国関税拡大に日欧建機業界が危機感、総額1兆円超の輸出に打撃
- 【余談】NHK『探検ファクトリー』、ミニショベルのクボタ枚方製造所を紹介
- 財務省貿易統計、2024年の建設・鉱山機械輸出は10%減の1兆7,684億円
- 経産省の機械統計、2024年の建設機械生産金額は20.4%減の1兆5,545億円、生産数量は0.4%増の434,764台
- コマツ、2025年4月1日付人事・組織を発表