川谷絵音が振り返る2025年の音楽シーン
グラミー賞を運営するレコーディング・アカデミーが「ブームになる」と予想したJ-POPも、Creepy Nuts、藤井 風、米津玄師と話題作が続き、国際音楽賞のMUSIC AWARDS JAPANがスタートするなど、また新たな段階に入ったことを強く印象付けた。indigo la Endが結成15周年を迎え、礼賛が武道館公演を成功させた一方で、ゲスの極み乙女がインディーズレーベルを立ち上げ、ジェニーハイは「フリーズドライ」に突入と、自身の活動にも変化の兆候が見られた川谷は、この一年をどのように感じていたのか。2020年代後半の音楽シーンの流れが、きっとここから見えてくるはず。
※この記事は2025年12月発売の『Rolling Stone JAPAN vol.33』に掲載されたもの。取材は12月上旬に実施。
Photo by Kana Tarumi
バッド・バニー/テイラーの二強時代
―2025年も海外のランキングから見ていくと、〈世界で最も再生されたアーティスト〉の1位にバッド・バニーが返り咲きました。
―9位がインドのアリジット・シン、10位がメキシコのフエルサ・レヒーダというのもグローバルな広がりを感じさせます。
―これまではバッド・バニーが1位でも「日本では耳にしないよね」という感じでしたが、他のラテンポップ系アーティストも含めて、いよいよ日本でも名前が浸透しだしてますよね。ちなみに川谷さんが楽曲提供した、原因は自分にある。「パラノイドランデブー」にシャッター音が入ってるのは、バッド・バニーの曲が念頭にあったんですか?
―〈世界で最も再生されたアーティスト〉で去年・一昨年と連続1位だったテイラー・スウィフトが、2025年は2位。
川谷:もう言わずもがなという存在ですよね。インディゴでYorke(オーストラリアのシンガーソングライター)とコラボして、Rolling Stone Japanで対談したとき、「テイラーがきっかけで曲作りを始めた」と話していて。日本にいると「一番影響を受けたのはテイラー」みたいな人とあんまり会うことがないけど、海外のアーティストと直接話して、やっぱりテイラーはすごいんだなって改めて実感しました。2025年に出たアルバム『The Life Of A Showgirl』は酷評されてるのも見かけましたけど、それも含めて、結局ずっとテイラーの話題が続いているというか。みんなずっとテイラーのことを話していたような気がします。
海外ヒットソングの新たな潮流
―5位がビリー・アイリッシュ、6位がケンドリック・ラマー、7位がブルーノ・マーズで、このあたりは2024年からの勢いがずっと続いている感じですよね。
川谷:ストリーミングで昔の曲が長く聴かれるようになったのもあり、トップ層とそれ以外で、かなり差が開いてきているのは感じますね。あとは大きいファンダムを持ってないと、こういうランキングに入ってくるのは難しい。日本でもミセス(Mrs. GREEN APPLE)の上位独占を踏まえて、Billboard JAPANチャートに新ルールが導入されたりしましたけど、このランキングを見るとそういった傾向は海外でも同じだなと。
〈世界で最も再生された楽曲〉1位のレディー・ガガ&ブルーノ・マーズ「Die With A Smile」、2位のビリー・アイリッシュ「BIRDS OF A FEATHER」は2年連続ランクイン
―ケンドリックは、昨年のドレイクとのビーフだったりは日本だと伝わりづらい部分もありましたが、2025年は「Not Like Us」が大谷翔平まで巻き込んで話題になりましたよね。
―Adoが所属するクラウドナインが2026年5月に開催する日本人アーティストのフェス「Zipangu」もLAが会場ですもんね。アジアでいうと〈世界で最も再生されたアルバム〉2位が、Netflixのアニメ映画『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』のサントラで、K-POPでは最も話題を呼びました。
―そう考えると、「Golden」は「Let It Go」的な受け入れられ方とも言えるかもしれないですね。K-POPの他の動きに関してはどうですか?
―10月には米ビルボード・ソング・チャートのトップ40からラップの曲が消えたというニュースもありました。
―酔っ払って屋上から椅子を投げて逮捕されたりしてますからね(笑)。
モーガン・ウォーレン『I’m The Problem』は、全37曲116分の超大作ながら全米アルバムチャート12週1位を達成
―作品と人格をセットで受け取る文化が根付いているということですよね。〈世界で最も再生された楽曲〉だと、現在20歳のソンバー「back to friends」が6位に入っているのが目立ちます。
―〈特別な愛を見つけた〉と歌う、4位のアレックス・ウォーレン「Ordinary」もそうですよね。
川谷:今はAIがすごくて、もはやAIを使っているのかの見分けもつかなくなってきたからこそ、その人の人となりというか、「その人を聴きたい」みたいな感じかもしれない。ただアレックス・ウォーレンの曲は2025年だけど、〈世界で最も再生された楽曲〉は上位3曲も含めて昨年(2024年)リリースが多いですね。まあ、誰かがTikTokとかで新しい使い方をして、そこからまた流行るみたいなのもありますしね。9位のグレイシー・エイブラムス「That’s So True」のように、アルバムのデラックス版の追加曲がヒットするのも今っぽい。今はもうシングルじゃない方がヒットするまでありますもんね。やっぱり「みんなが知らない曲を使いたい」みたいな欲求がどこかにあるんでしょうね。
―グレイシー・エイブラムスがテイラーの「The Eras Tour」に参加してたり、サブリナ・カーペンターもテイラーの最新アルバムに参加してたり、テイラーがフックアップして次のスターが生まれる、みたいな流れもありますよね。
川谷:サブリナの新しいアルバム『Man's Best Friend』はめちゃくちゃ聴きました。「Tears」を2025年の10曲に選んだんですけど、最近の洋楽だとメロディが2種類とかあって、それが交互に出てくる曲が好きなんですよ。そういうメロディが何種類かある曲ってコードがループのことが多いんですけど、「Tears」はループじゃなくて、はっきりコード進行が2パターンで分かれていて。そこがすごく好きですね。日本でもループ系の曲が増えていて、なとりくんの「プロポーズ」もサビがなくて、わかりやすく盛り上がったりしないのにヒットしている。日本も「Aメロ・Bメロ・サビ」みたいな感じだけではなくなってきている気がします。
PICK UPS
- Music Traveler 06 feat.岩田剛典 「旅の醍醐味はインプット」初のソロアジアツアーと思い出の旅
- Rolling Stone Japan / ツタロックフェス 採用情報 新規メンバーを募集します!詳細はバナーをクリック!