【銃猟師】VS【ニホンザル】銃猟によるサル捕獲の戦略・追跡マニュアル
前回にも少し触れましたが、猟師に追われたサルの群れは、猟師の足を止めて本隊が逃げる時間を稼ぐ『引付役』が存在します。この引付役は猟師の前に姿を現すため、おのずと銃による捕獲機会が一番多い相手になります。 しかしながら引付役となるサルは、群れの中でもNo2、3ぐらいの力を持ったオスザルなので、警戒心や身体能力が高く、狙撃の難易度はかなり高めです。そこで引付役を捕獲するためには、しっかりとした戦略を考えておく必要があります。
最後尾の『大ザル(ボス)』群れが統率されて逃げているとき、大きなサルが一番後ろにいることがあります、この〝ケツモチ〟をしているのが『ボスザル(※)』です。 ボスザルは群れの統率役になっているようで、逃げていく群れを観察していると、周囲ににらみを利かせながら「のしのし」と歩いていることがわかります。このときの動きは、こちらを警戒している引付役や、逃げるのに徹する本隊のサルよりも動きが遅いため、比較的捕獲しやすいターゲットになります。
この『ゆっくりのしのし』というボスザルのあゆみは、おそらく他のサルに〝余裕〟を見せつけて、群れを落ち着かせるためだと思われます。体験的に、ボスザルが慌てて逃げているようなシーンでは、群れ全体がパニックになっていることが多いです。
群れの本隊となる『メスザル』群れの本隊となるのが、メスザルや子ザルです。引付役となるサルたちは、この本隊を敵から守るための行動を優先します。 前回少しお話ししましたが、ニホンザルは群れ全体の行動を『年寄りのメスザル』が決めています。すなわち、群れの中で最も命の優先度が高いのは『年寄りのメスザル』たちであり、引付役やボスといったオスのサルは、彼女たちの捨て駒・・・体裁よく言えば、女性たちを守るナイトというわけです。
狙うなら大所帯サルには、群れを追い出されて単独でいる一匹ザルがいます。このようなサルは狙いやすいように思えますが、実際は捕獲チャンスが極めて少ないです。 というのも、一匹猿は「鳴かず・騒がず」で見失いやすく、さらに群れのことを考えなくてもよいため、一目散に逃げていくからです。 また、一匹猿でなくても、小規模な群れも逃げ足が速いため捕獲は難しいです(それでも一匹猿よりかは何倍も獲りやすいですけど)。 よって銃による捕獲は、攻略方法が多く隙ができやすい大規模な群れの方が簡単です。群れが大きくなると、勝手な行動をするサルや危機感の薄いサル、迷子ザルなどが現れるので、捕獲のチャンスはグッと増えます。
群れの経験値によって捕獲難易度は大きく変わるサルの群れは、統率がとれていない群れがある一方で、「おまえら特殊部隊かっ!?」と思えるぐらいに完璧な連携を取る群れもあります。当然ながら、優秀な引付役・ボスがいる群れは、捕獲難易度が急上昇します。 私は同じ群れを何度も襲撃しているのですが、そこの引付役を捕獲し続けたことで、群れの統率力が低下しているように感じます。これはおそらく、群れの〝エース〟が撃墜された穴を〝ルーキー〟が埋めるためです。 引付役は危険が多い役割であることから、サルたちも嫌々やっていることもあるようです。そのため、特にルーキーはストレスに負けて遁走する(逃げ出す)ことも多く、群れがパニックになって短時間で勝負が決まることもあります。
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群れを分断させて引付役の拘束を長くする猟師がサルを発見したとき、ほとんどの場合は群れが散らばった状態ですが、危険を察したサルたちは鳴き声で連絡を取り合って『合流場所』を決め、団体で逃げようとします。 このとき猟師は、地勢やサルの声が聞こえてくる方向から合流場所を予想し、その間に陣取って群れの集合を防ぐようにします(実際はなかなか難しいですが)。 群れを分断させる理由は、引付役の拘束を長くするためです。もし、早い段階で本隊が遠くに逃げてしまうと、引付役の仕事も早く終わってしまうため、猟師の前に姿を見せる時間が短くなってしまいます。 しかし、集合するまでの時間を長引かせて本隊の逃げ足を遅らせると、引付役が猟師の前に姿をさらす時間が伸びます。必然的に、捕獲できるチャンスが増えるというわけです。
作戦開始の合図を聞き逃さないようにしようサル同士が鳴かなくなったときや、引きつけ役が急に騒ぎはじめたときは、サルたちの間で『このあとどうするか?』が決まり、作戦が実行される寸前の状態です。ここからサルたちがどのような行動を起こすか、気を引き締めて状況を確認しましょう。 なお、確認時は後方も警戒するようにします。目の良いサルは、猟師からの〝死角〟をよく知っています。そのため本隊が、猟師から死角になる後方をコソコソ移動しているときもあるのです。
サルの群れは隠れてやり過ごそうとすることもある以前、私がサルの群れを追跡していたときに、『逃げた方向に先回りするも、一向に姿を見せない』といった状況がありました。「おかしいなぁ・・・」と思いながら、元の場所に戻ってよくよく探索をしてみると、なんとその群れは元の場所から『動かず騒がず』でジッと伏せていたのです。このようにサルの群れは逃げるだけでなく、隠れている場合もあるので注意が必要です。 ちなみに、その群れは私に見つかったあと、小さく「見つかったぞ!」的な鳴き声をあげて走り去っていきました。
執拗に追跡を続けて集中力を削ぐ作戦開始からすぐに引付役を狙撃できない場合は、本隊を〝執拗〟に追い続けます。引付役は、「敵を引きつけられない・撒けない」となると、かなりのプレッシャーを感じるようで、目に見えてイライラしはじめます。 このようなストレス負けした引付役は、動きが雑になってくるため、狙撃のスキがおおくなっていきます。引付役がイライラし始めるのは、もちろん個体差にもよりますが、体感的には1~2時間ほど追跡をし続けたときでしょうか。 気を付けておかなければならないのが、イライラしたサルは岩を転がしてきたりと、実力行使に出ることもあります。サルから反撃を喰らわないように十分注意して行動しましょう。
サル知恵を逆手にとった戦略メインターゲットとなる引付役ですが、なかなか狙撃が難しいシーンもあります。そういった場合は、サルの知恵を逆手にとった作戦もあります。 まず、引付役を追いかけて、こちらが有利になる場所(サルからの死角が多い場所)まで移動しましょう。次に、引付役が見ていないと思われる隙に隠れて静かに様子を見ます。 すると、敵を見失ったことに焦りを感じた引付役が探しにきてくれるので、そこを狙います。これは、私のサル捕獲で最も実績のある作戦です。 冗談みたいな作戦ですが、事実私が隠れていたところ、引付役のサルが2mほど手前に現れてお見合い状態になり、お互いに驚いたことがあります(笑)
作戦は猟師さんによって色々銃によるサル捕獲の作戦ですが、今回私がご紹介した方法以外にも色々とあります。例えば、私の知り合いのサル撃ち名人の場合は、「サルが騒いでいると必ず通る獣道がある」らしく、そこに一日中座って待つそうです。
足を音を変えてサルを欺く!?別の猟師さんは車で流してサルを探し、見つけたらいったん通り過ぎてから歩いて戻ってきます。このとき、足音を毎回変えて近づき、有利な位置まで近づいてサルを狙撃するそうです。足音を変える理由は「サルは足音も覚えるからなぁ~」とのこと。
変装作戦でサルを欺く!?さらに別の猟師さんは、割烹着を着てほっかむりを被り、後ろ手に銃を隠して『農家のおばさん』に変装して近づいたそうです。この変装作戦は、警戒心の強い年寄りサルは見破ることが多いそうですが、経験の浅い若いサルは騙されやすいのだとか。 このように、銃によるサルの捕獲は、みなさん色々と試行錯誤されているようです。群れや地域で習性が少し違いますので、探り探り狙うことが多いです。
捕獲のテクニック
今回のお話の最後に、半矢になったサルの追跡についてお話をしたいと思います。
サルは矢に強い 半矢の追跡半矢サルの追跡は、他の動物と同じように血痕を探っていきます。シカやイノシシの場合は、ある程度走ったら大量出血して倒れ込んでいることが多いですが、サルの場合は木の影や窪みに隠れていることもあります。また、仲間のサルが助けに来ることもあります。
見失った場合は水場を探す血痕を見失ったときは谷に下りてみましょう。人間を含めた多くの動物は、大量に出血をすると低血圧による心停止を防ぐために、体中の水分が心臓や脳に回されます。すると猛烈な喉の渇きを感じ、水を欲しがるようになります。 しかし、この状態で水を飲んでしまうと急激に体力を失いショック死することがあります。なので、半矢のサルは水場でこと切れていることが多いのです。
サル捕獲は難易度がドンドン上がっていくサルは非常に頭が良いため、一度群れを襲撃した猟師を覚えてしまいます。しかも、覚えるのは猟師の顔だけでなく、背格好、乗っている車、さらには自宅まで突き止められてしまいます!実際に、私がこの原稿を書いているときにも、向かいの山からサルに監視されています・・・恐ろしいヤツらだ。
サルは目で人間を判別することがあるサルから『敵』として覚えられないようにする対策として、『目』を見られないようにしましょう。ベテランの猟師さんも「サルとは目を合わすな」とおっしゃられるように、サルは相手の目で情報を得る動物です。なので、例え車を変えようが、変装をしようが、一度『目』を覚えられた猟師は、サルからマークされてしまいます。
まとめ
- サルの群れは、引付役・ボス・本隊の3種類に分けられる。捕獲しやすいのは引付役
- サル捕獲の作戦は色々あるが、私の場合は群れを分断し、混乱している隙に捕獲する
- 半矢になったサルは谷を探す。水場でこと切れていることが多い