『まどマギ TV Edition』の“変更点”を総括 差異とループの再構築は“ワルプルギスの夜”へ
2011年に全12話のTVシリーズとして放送された『魔法少女まどか☆マギカ』。翌年2012年、その12話を2編の劇場版として再編集し「[前編]始まりの物語」「[後編]永遠の物語」として公開。この2作では、随所にわたってカットのアップデートと新規カットが追加され、さらに再アフレコが行われました。
今回は、そんな劇場版[前編][後編]を全11話のTVシリーズとして再編成し、『「魔法少女まどか☆マギカ 始まりの物語/永遠の物語」TV Edition』として放送します。本作が、まだシリーズを観ていない方が「まどか☆マギカ」の世界に触れるきっかけに、また、すでにご覧いただいている方にとっても、新作〈ワルプルギスの廻天〉公開に向けての振りかえりとしてお楽しみいただけたらと思います。(※)
この点を踏まえるならば、『TV Edition』が掲げる「劇場総集編の再編成」という言葉を字義通りに受け取ることはできない。本作で実際に繰り広げられているのは、既存の素材の整理といった穏やかな編集作業ではなく、異なるバージョンに属する映像を横断的に接続し、新たな文脈を生成するための大規模な「再構成」である。2011年放送のTVシリーズと、2012年公開の劇場総集編──この二つの異なるバージョンを再構成することで成立している、きわめて特異な作品として『TV Edition』は立ち上がっているのである。
“作り直し”レベルの改変が施された劇場総集編
ほんのちょっと作画の乱れを直すだけ、ぐらいなつもりでいた私自身が、完成したフィルムを拝見して、お客さんと同様、いやそれ以上に度肝を抜かれました。もうほぼ完全にリニューアルじゃないっすか! こりゃTV版観ただけでスルーなんてとんでもない、むしろ完全版として再見必須の映像じゃないですか!(『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ KEY ANIMATION NOTE VOLUME extra 始まりの物語/永遠の物語 RAKUGAKI-NOTE』)
こうした前提がある以上、劇場総集編で削除されたTVシリーズ固有のシーンを、今回の『TV Edition』へそのまま流用することは、構造的に不可能なのである。劇場総集編の制作段階で設定そのものが大幅に更新されたため、旧バージョンの映像をそのまま劇場総集編の映像に貼り込んだ瞬間に、画面内の整合性は崩れる。ゆえに、当該シーンは原則として新規に描き直すほかない。本作のエンディングに、「TV Edition 作画協力:勝冶果歩」、「TV Edition 色彩設計:日比野仁」、「TV Edition 仕上協力:川上優子」(第5話)といった新しいクレジットが追加されているのは、そのためだろう。
『TV Edition』における“恣意的なリテイク”
自分の中でこの劇場版は「もう1〜2回ループした世界」というイメージなんです。だから何もかもが同じではなく、細かいところはちょっとだけ違う。あくまで自分のイメージなのですが、「あれ?」って気づいた人にそんな想像してもらえたらいいな、と思っています(『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ [前編] 始まりの物語』劇場パンフレット)
この観点に立つならば、『TV Edition』における「再編成」とは、異なるバージョン間に潜在していた差異を掘り起こし、それを意図的に増幅する試みとして理解できる。設定の改変に伴う整合的な修正としての「必然的なリテイク」と、世界の揺らぎを示す徴候としての「恣意的なリテイク」とが混在することによって、『TV Edition』は分岐し続ける複数の世界線そのものを提示してみせるのである。